福島第一原発事故をめぐり、東京電力の旧経営陣3人が業務上過失致死傷の罪で強制起訴された裁判で、最高裁は検察官役の指定弁護士の上告を退ける決定をしました。旧経営陣に無罪を言い渡した1、2審の判決が確定することになります。
この裁判は、福島第一原発の津波対策を怠ったことで、2011年の原発事故で避難を余儀なくされた病院の患者ら44人を死亡させるなどしたとして、東京電力の勝俣恒久・元会長と、武黒一郎・元副社長、それに、武藤栄・元副社長の旧経営陣3人が業務上過失致死傷の罪に問われたものです。
3人は東京地検が不起訴としたものの、検察審査会の2度の議決を経て2016年に強制起訴されました。
裁判の大きな争点は、当時の経営陣が原発事故を引き起こすような巨大津波を予測できたかどうかです。
ポイントとなるのは、国の地震調査研究推進本部が震災の9年前に公表した地震予測「長期評価」です。「長期評価」は太平洋側の広範囲で津波地震が発生する可能性を示唆するもので、これにより旧経営陣が巨大津波を予測できたのか、「長期評価」の信頼性が争われていました。
1審の東京地裁と2審の東京高裁は「長期評価」の信頼性を否定し、「10メートルを超える津波が襲来する可能性は予測できず、原発の運転停止を講じるべき業務上の注意義務があったとは認められない」などとして、無罪判決を3人に言い渡していて、検察官役の指定弁護士が判決を不服として上告していました。
最高裁は今月5日付の決定で、争点となっていた長期評価について、「10メートルを超える津波が襲来するという現実的な可能性を認識させるような情報であったとまでは認められないとの高裁の判断が合理性を欠くものと考えるのは困難」とし、上告を退けました。
これにより、旧経営陣に無罪を言い渡した1、2審の判決が確定することになります。
3人のうち勝俣氏は去年10月に亡くなり、最高裁は裁判を打ち切る公訴棄却を決定しています。
決定を受けて、検察官役の指定弁護士や告訴団がそれぞれ会見を開きました。
指定弁護士を務めた石田省三郎弁護士は「原子力行政におもねった不当な判断で、厳しく批判されなければならない」としたうえで、「検察審査会が示した民意を生かすことができなかった。残念でならない」と述べました。
福島原発告訴団の武藤類子団長は「最高裁に一縷の望みをかけてきた。このような判断は原発事故の被害者を踏みにじる冷酷なもの」と涙ながらに話し、今後について、「東電が大きな津波が来る可能性を知りながら、何一つ対策をしなかったというたくさんの証拠を手に入れた。広く社会に広めていきたい」としました。
一方、東京電力は「大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて心からおわび申し上げます」としたうえで、「刑事訴訟に関する事項については、当社としてコメントは差し控えさせていただきます」としています。
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