当時の中学生が証言台に

証言後の報告集会でマイクを握る父の金本友孝さん(中央)

暁さんは今27歳、福岡市内で会社員をしています。避難してきたこと、福岡の人たちと出会ったこと自体は、今となってみたらよかったかもしれない。しかし、自分のやりたいことは全部否定されてしまった違和感、憤りは今も強く持っていました。本人尋問が終わった後の報告集会では、質問をした池永修弁護士と暁さんが、ほっとした表情で感想を述べました。

池永修弁護士:一番僕が描きたかったのは、これだけ大きな葛藤とあつれきを抱えながら、この14年間、金本さんご一家が存在していたのだということと、もしお互いの意見を鮮烈に突き合わせていた場合、多くの日本中のご家族・ご夫婦がそうであるように、不幸に分裂してしまう。そうならないよう、どれだけお互いを思いやりながら配慮しながら、折り合いをつけて、この14年を過ごしてきたのか。この事故によって金本家が背負わされてしまったものを、どうすれば理解していただけるのだろうと、この間準備をしてきたところです。見事に暁さんが証言をしてくれたと思います。ありがとうございました。

証言を終えて報告する金本暁さん

金本暁さん:今日はものすごく緊張して、でも本番に強かったんで、よかったかなあと。改めてやっぱり、「当時すごいショックだったな」というのを感じました。端的に言うと楽しくなかったです。兄妹の話も出ましたけど、これ(証言)を兄にやらせたいか、妹にやらせたいかと言われたら、やってほしくはないなあとは思います。ものすごく楽しくなかったです。

子供世代を代表して証言台に立つ。振り絞るようにしゃべっている感じでした。原発事故から14年。中学1年生が27歳の青年になった、それだけの長い時間です。事故によって変わってしまった人生を受け容れるために必要な時間だったかもしれません。子供にそういう思いをさせてしまったことは、やはり大人に責任があると私は思います。九州訴訟の控訴審は5月22日に結審して、判決を迎えることになります。皆さんの思いが届くかどうか、注目しています。

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。1991年、毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。2005年にRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にした映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は、各種プラットフォームでレンタル視聴可。ドキュメンタリー最新作のラジオ『一緒に住んだら、もう家族?「子どもの村」の一軒家?』(2025年)は、ポッドキャストで無料公開中。