約1500か所で測定「今世紀で最も重要な発見のひとつに」
リーブス氏の説に強い関心を持つ、元考古相のエルダマティ氏。調査団長として、今回指揮を執っている。

ツタンカーメン墓調査団長 マムドゥーフ・エルダマティ氏
「もしここがネフェルティティの墓であれば、今世紀で最も重要な発見のひとつになる。ツタンカーメンの墓は王家の谷の中で最も小さな墓。確かに元の墓から切り離されている可能性がある」
これは「王家の谷」のジオラマ。地中の王墓の構造を表している。

ツタンカーメンの墓は、周囲のほかのファラオのものに比べて奥行きがなく、極端に小さい。
ツタンカーメンの2代後のファラオ・ホルエムヘブの墓。実は、この墓もかつては絵が描かれた壁が奥の空間を隠していた。

取り除かれた壁の奥に進んでいくと、ツタンカーメンのものとは違い、地中深くまで墓が続いている。
一方、この断崖絶壁の中ほどにあるのは、ツタンカーメンよりも150年ほど前にエジプトを支配していた、ハトシェプスト女王の墓。

墓の中を進んでいくと、右に曲がる構造だ。古代エジプトでは、直線か左に曲がるのは男の王の墓、右に曲がるのは女王の墓の特徴だという。
ツタンカーメンの墓も右曲がり。こうしたことが、ツタンカーメンの墓の奥にネフェルティティの墓があることを推測させる理由にもなっているのだ。
「王家の谷」観光の目玉である、ツタンカーメンの墓の調査は観光客がいない夜間、本格的におこなわれる。人気(ひとけ)のない王家の谷に作業の音が響き渡る…

そして、墓の内部。北側の壁を中心に地中レーダーで、壁の奥に“未知の空間”があるかどうかを徹底的に調査する。他の壁も何度も往復し、異なる周波数を使って、延べ4800メートルにも及ぶ膨大なデータを収集した。
さらに、今回初めて導入されたのが、地中深くの構造を調べることができるマイクログラビティ調査だ。

地表の極めてわずかな重力変化を捉えることで、地中にあるかもしれない“未知の空間”の広がりなどを調べることができる。
調査団はツタンカーメンの墓の周囲、約1500か所で測定“未知の空間”に迫った。
古代ガラスの研究者、上野由美子さん。リーブス氏とともに約30年間、ネフェルティティの墓を探してきた。今回の調査について…

ツタンカーメン墓調査団 上野由美子さん
「今までこのようなきちっとした、計画的な調査がされたことがないので、データを組み合わせると、今までわからなかったことが出てくるかもしれない。確かにニック(リーブス氏)が言っていたような、北の壁の奥で何かが続いているかもしれない」
調査団長のエルダマティ氏も自信を見せる。
ツタンカーメン墓調査団長 マムドゥーフ・エルダマティ氏
「異なる技術を組み合わせて、私たちは何かを見つけることを望んでいる。必ずできると確信している」