ツタンカーメンのマスクに“不自然なつなぎ目”

ツタンカーメンの墓の奥にネフェルティティの墓があるとすれば、そこにはツタンカーメンと同様、素晴らしい副葬品が眠っているのだろうか。

そのヒントは他でもない、ツタンカーメンのマスクに残されているとリーブス氏は言う。

エジプト考古学者 ニコラス・リーヴス氏
「マスクの頭巾部分の青は色ガラスなのに、目の周りはラピスラズリが使われている。2つの素材を混ぜるのは奇妙」

このマスクの青の部分、頭巾の青は「ガラス」で、顔の部分は天然石の「ラピスラズリ」と、違う素材が使用されていた。

また、頭巾は「22金」なのに、顔は「18金」とこちらも別の素材。頭巾と顔の部分が同時期に作られていたなら、同じ素材が使われるはずだが…

実は、頭巾と顔の間には不自然なつなぎ目がある。つまり、このマスクは別の時期に作られた頭巾と顔が、つなぎ合わされた可能性があるのだ。

リーブス氏は、これらの痕跡から、“ツタンカーメンのマスクはもともとツタンカーメンのためにつくられたものではない”と考える。

では、誰のためにつくられたものなのか…

マスクに刻まれた、ツタンカーメンの名前。よく見てみると文字を削った痕跡がある。
そこに刻まれていた本来の名前を復元すると…

浮かびあがったのは、“アンクケペルウラー”の文字。

リーブス氏によると、ネフェルティティは権力の階段を昇るにつれて名前を変えた。女王になった際には「スメンクカーラー」と名乗ったが、それ以前、夫との共同統治者時代の名前こそが「アンクケペルウラー」だったという。

では、なぜネフェルティティのためにつくられたものが、ツタンカーメンのものとなったのか。

エジプト考古学者 ニコラス・リーヴス氏
「ツタンカーメンの死は突然だった。あまりにも若かったために、埋葬の準備は何もされていなかった」

10代の若さで亡くなったツタンカーメンには、副葬品などの準備がされておらず、ネフェルティティの共同統治者時代につくられ、実際には使用されなかったものが流用された。その割合は、ツタンカーメンの副葬品の8割にも及ぶと、リーブス氏は考える。

ツタンカーメンの副葬品には、名前が書き換えられたような形跡があるものが極めて多いという。

エジプト考古学者 ニコラス・リーヴス氏
「ツタンカーメンの副葬品は美しく素晴らしい。あくまで(ネフェルティティに使うはずだった)共同統治者用。正式なファラオの副葬品は、さらに豪華で威厳に満ちたものだろう」

そして、義理の母であるネフェルティティの墓の一部に、ツタンカーメンは埋葬されたという。

エジプト考古学者 ニコラス・リーヴス氏
「私は長年ネフェルティティの墓を探してきた。この壁の向こうに彼女の存在があるという根拠は非常に強い。これがネフェルティティの墓だとすれば、考古学史上最も偉大な発見のひとつになる」