自宅に作った世界最古の機械式プラネタリウム

オランダの小さな町フラーネケルには唯一無二の世界遺産があります。それは18世紀末にアマチュアの天文学者アイゼ・アイジンガーが自宅に作った世界最古の機械式プラネタリウムです。

現代のようなドームに星を投影するというものではなく、太陽を中心に惑星などが回る模型のプラネタリウムです。きっかけはこんな出来事でした。

1774年、惑星が一方向に並ぶという珍しい現象が起き、人々が「この世の終わりだ」と騒ぎだしたのです。この出来事に心を痛めたのが独学で天文学を学んだアイジンガーで、彼は人々に正しい天文の知識を広めるために居間の天井にプラネタリウムを作ることにしたのです。しかし、それには妻を説得する必要がありました。妻は部屋の中にプラネタリウムを動かすごちゃごちゃした機械が見えるのを嫌がったのです。アイジンガーが機械を天井裏に隠すこと約束し製作を始めることができたといいます。一部の機械を除き作業のほとんどを自ら行い、7年かけて土星に輪があるなど惑星の形と太陽や惑星の距離の縮尺を正確に再現し、365日24時間動き続ける機械式プラネタリウムを完成させました。すると評判になり全国から見学者が訪れたといいます。

アイジンガーが作ったプラネタリウムは、太陽系を正確に表現した技術と創造性が評価され2023年世界遺産に登録されました。現在は博物館として公開されていますが、機械式プラネタリウムは約240年経った今でも動いています。