50年間 抱え続けた疑念
なぜ、桐島容疑者は過激派に身を投じたのか。岡田さんは、その理由を宇賀神氏に尋ねようと鎌倉市を訪れた。
50年間抱え続けた疑念を宇賀神氏にぶつける。
岡田さん
「『(桐島容疑者は)人に影響されやすい男だな』という思いはあった。だから常に思ってきたのは、そういう方向へ引っ張り込まれたんじゃないかという思いが強かったわけです」

宇賀神氏
「影響されて動くような人間じゃない」
岡田さん
「失礼ですけど『宇賀神に引っ張られたんよ』という話はしてたんですよ。仲間内はね。だから実際にはどうだったんか」
宇賀神氏
「引っ張るような人間に見えますか?私が」

「彼が誰かに引っ張られていったのではなく、自分の判断でそういう戦いを選んでいった。彼が単に何も考えない人間だと。絶対にそれはおかしい。間違っています」
宇賀神氏は桐島容疑者を強引に組織に引き込んだわけではないと否定した。
岡田さん
「大学1年の夏頃までは、(桐島に)全くそういう雰囲気はなかったわけですよ」
宇賀神氏
「中国人や朝鮮人に対する戦中・戦後の反人権行為に対する問題意識とか、そういうものを勉強していく中で、テロ闘争を選ぶようになった」
岡田さん
「桐島から望んでグループに入ったということですか」
宇賀神氏
「結果的にはそうでしょうね」
岡田さんは、「せめて出頭を促すべきだった」と食い下がった。
岡田さん
「先に出所されて、桐島の罪状も知っているわけでしょ。なんで(出頭を)呼びかけてくれなかったのか」
宇賀神氏
「生きているかどうか分からない。出てきても刑務所にいることになる。だから出ない方がよかった」
岡田さんと宇賀神氏の考えは、平行線を辿った。
2人は桐島容疑者の「内田洋」としての生活を知りたいと、藤沢市のバーを訪ねた。店長の男性は事件の被害者に配慮しつつも、本音を伝えた。

店長の男性
「自分たちがお話をすると、楽しい思い出しかないわけで。被害者の方がいることを考えると、素直にその気持ちは出てこなかった。僕にとっては内田さんは内田さんであって、仲が良かったぶん、友達が亡くなったのと同じ感覚でもあるので、寂しいです」
2024年、宇賀神氏は手記で桐島容疑者の逃亡は「公安警察への勝利」だったと記した。
その感情に変化がみえた。
宇賀神氏
「テロリストではなくて、普通の人間として生き直していく。『(警察への)勝利宣言』というには不釣り合い」