「小説を書いて編集者からダメ出しされるぐらいあり得ない」

藤森祥平キャスター:
国連では、かなり象徴的なシーンがありました。

ウクライナ侵攻が始まって1年、つまり今から2年前(2023年2月)の国連総会では、今回と同じように、ロシア軍の即時撤退などを求める決議案の採決が行われました。アメリカなどを中心に、ほとんどの国(141か国)が賛成に回っています。

一方、ロシアを含む7か国が反対。ロシアに近い中国も、反対には回らずに棄権(32か国)していました。

今回、同じような国連総会で決議案の採決が行われ、日本を含め、やはり大半の国(93か国)は賛成に回って採択されました。

ところがロシアにアメリカが接近し、一緒に反対に回りました。反対した18か国のなかには北朝鮮や、ロシアの同盟国であるベラルーシも含まれています。さすがの中国は、やはり今回も棄権(65か国)に回っています。

まさか、ここまでずっとロシアのことを強い言葉で非難してきた国連の場で、アメリカがウクライナ侵攻を巡ってこういう動きをとるとは正直思いませんでした。

小説家 真山仁さん:
これは小説を書いて編集者からダメ出しされるぐらいあり得ないことですが、トランプ氏が大統領になってからずっとあり得ないことが続いていて、「またか」となってしまいます。こんなことをしたら、国連はいらなくなりますよね。

アメリカとロシアがすべて決めて、あとは言うことを聞きなさいというのは、こんなことでいいのか、信じがたいとしか言いようがないです。

藤森キャスター:
侵攻が始まってからずっと国連を見ていて、まさかこういう形を想像することができませんでした。ただ大統領が変わるだけで、世界の構造がガラッと変わるということを痛感しました。

小説家 真山仁さん:
もともとアメリカは“世界の警察”といわれ、世界のバランスをとるために頑張ってきましたが、トランプ氏はアメリカ・ファーストで、「アメリカさえよければいい」と言って圧勝しました。

アメリカさえよければいいのなら、ロシアとアメリカが組んで自分たちの利益を優先しようということを、今回は堂々とやってしまっています。

やはり2期目のトランプ氏はものすごい自信を持っていて、自分のやることにどれだけの影響力があるかという、アメリカの大統領としての底力というか強さを感じます。

さらにロシアと組むというのは、暗黒の時代が始まったのではないかとしか言いようがないです。

小川彩佳キャスター:
トランプ氏の向き合いの一つの局面が、こうしたところにも出ているわけですね。

トランプ氏はウクライナ国内のレアアースの権益の譲渡を要求しており、「ウクライナから資金を回収するつもり。我々が求めるのはレアアースや石油。得られるものは何でもいい」と発言しています。

そして、プーチン大統領も「(一方的に併合したウクライナ4州を念頭に)アメリカなどと共同開発する用意がある」と語っており、こうしたところにも表れています。

小説家 真山仁さん:
最初は人道的な理由でウクライナを支援したと思いますが、アメリカ人にとって何の利益もありませんよね。しかし、実はレアアースをもらえば、この仲介は非常にアメリカにとってプラスだろうということです。

トランプ氏はずっと、アメリカの国民のことだけを言い続けています。関税にしても何にしても、嫌ならアメリカに工場を作れと。

どんどんトランプ大統領の支持が上がるのではないかというぐらい、アメリカ一辺倒なことをこのまま続けられるのは、そろそろ日本やヨーロッパは本気で怒ったほうがいいです。

小川キャスター:
そして、そのディールの矛先が日本にいつ向くかもわからないと。

小説家 真山仁さん:
悪魔のバランスのよさぐらい、ずる賢くなってきた気がします。

藤森キャスター:
日本も、ちゃんとメッセージを発信し続けられるか。

小川キャスター:
問われていますね。

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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
食と農業をテーマにした「黙示」を執筆