21万トンはどこに消えたのか

農水省は、滞っているのは、あくまで「流通」とみています。24年産のコメの生産量は、前年より3%多い679万トンだったので、「コメは足りている」としています。生産が増えたにもかかわらず、流通量が減っているのは、把握できていないところにコメが流れ、留まっているからなのではないか。備蓄米放出で、減った21万トン分のコメが市場に出れば、価格は落ち着くのではないか、というのが農水省の見立てです。

では一体、21万トンはどこに消えたのでしょうか。去年夏以来の、コメ不足やコメ高騰を受けて、農協などの集荷団体とは別に、農水省が把握していない様々な業者や個人が、コメを買い付けたと見られます。コメは保管できる作物です。価格が上がることがわかっている商品を早めに買って、利ざやを稼ぐのは商売の基本です。まだまだ価格が上がると思えば、なかなか売りません。

だとすれば、この人たちが、「これ以上持っていても損が出るので、売却しよう」という状況になるかどうかが、一番重要なポイントです。今、言われている1~2割の価格低下で、そうした状況になるかどうかは微妙だと、私には思えます。

滞っているのは「流通」で「コメは足りている」という農水省

農水省は、今回放出する備蓄米21万トンを、近い将来、市場から買い戻すとしています。「コメは足りており、滞っているのは流通だけ」というのが、農水省の論理だからです。しかし、買い戻しが条件であれば、再びコメ価格が上昇に転じるかもしれないと期待するのが、普通の心理です。この期待が、在庫維持につながり、価格低下を妨げる効果は、それなりに大きいのではないでしょうか。

さらに、本当にコメは足りているのか、これがそもそも疑問です。コメが足りているのであれば、当初、農水省が言っていた通り、どこかで価格は落ち着いたのではないのか、そもそも去年、あれほど店頭からコメがなくなることもなかったのではないか、と思えるのです。

もしコメが足りていないのであれば、端境期の今年の夏には、再びコメが不足し、価格は再度、高騰に転じる恐れもあるのではないでしょうか。