復旧と復興を分けて考えなくてはいけない

県が着目したのが立山連峰を望む富山県ならではの地形が育んだ「豊富な地下水」の活用です。

記者
「富山市の県庁前公園です。こちらにあるのが防災井戸です。災害時に生活用水として活用できます」

手動のポンプで地下水をくみあげる防災井戸。電源を必要としないため断水や停電が起きてもレバーを押すだけで誰でも簡単に水を確保できます。

すでに県庁周辺や高岡おとぎの森公園など県内8か所に整備されていますが県は市町村に対し新たな防災井戸の整備を支援します。

北陸三県では初めての取組みで富山県は防災井戸を年間4か所ずつ増やしていくことを目指しています。

富山県防災危機管理課 熊本誠課長
「災害時には、地域のことは地域で守っていくというような心構えそういった意識の醸成にも繋がればというふうに考えております」

富山県の能登半島地震災害対応検証会議の委員でもある富山大学の井ノ口宗成准教授は予算案に盛り込まれた防災井戸の整備について。

富山大学 都市デザイン学部 井ノ口宗成准教授
「水を何人分、何日分運んでいきましょうと言うともう運び下ろしでも大騒ぎですし、その水をストックしておくだけでも大変ですし、そういう意味ではその防災井戸の活用というのは我々水が十分にあるような環境下におりますから、そういう意味では、そういう資源をうまく活用するっていうことはありだというふうに思います」

井ノ口准教授は富山県の予算案について…。

富山大学 都市デザイン学部 井ノ口宗成准教授
まず復旧という言葉と復興っていうのは分けて考えなきゃいけなくて、復旧については、それなりに予算を使われていて、今の困っている被災者の皆さんを救うということを考えて予算化をされているのは評価できる

建物など形があるものを元に戻す「復旧」への支援を評価する一方で、より長期的な視点が必要な「復興」については不十分さを指摘します。

富山大学 都市デザイン学部 井ノ口宗成准教授
「復興っていうと次の災害に備えて、あるいはその今の災害をきっかけに良くすることっていうところがあると思うんですけれども、それが十分かどうか簡単に言えば、県民の皆さんの意見をまず聞いたんだろうかっていうところは、やっぱり疑問点が一つ目、残るところ」「復興計画のなかで何をビジョンとして描くかはすごく需要な問題になります。復興につなげたような次の世代の富山の形というのが何も見えてこなくて…」

井ノ口准教授は、今後の復興に向けて県民から意見を聞いた上で、復興イベントなどを通して、忘れられたと感じる被災者を作らないことが重要だと指摘します。

富山大学 都市デザイン学部 井ノ口宗成准教授
「被災者が忘れられたと思ってしまうことが一番の問題なんですね。『私ってもう、1人だけの被災者なんだけど…』と、やっぱりなるとですね、やっぱり忘れられた被災者っていうふうに思っちゃうと、もうそこで復興は止まるんです。まだ被災者っていう顔をしにくくなってくる。本当は被災者なのに。それをある意味、被災者は自由に声を出していいだよっていう日を例えばつくるっていうのが、ある意味の復興イベントのポイントなので、その被災者が声を出しやすくする環境にもつながりますから非常に重要だと思っています。忘れられる被災者を作らない復興っていうことをすごく大事にしたい」