17歳の少年は、傷害の罪で少年院に収容された。やんちゃで威勢がいい非行少年ではなく、一見どこにでもいそうな風貌だが、彼女との喧嘩で首を絞めた。
性格はキレやすく、衝動的に相手を傷つけてしまうところがあるという。
少年のIQは70台。平均的な知能と障害の狭間にある「境界知能」に該当する。
本人にも家族にも自覚はなく、生きづらさを抱えていた。
「助けの求め方がわからない」という少年。
非行に走った背景には、家庭環境も大きく影響していた。

■非行の「原点」 暴力を受けた過酷な幼少期

(少年)「彼女が浮気してたのが分かったんで、それで喧嘩して手を出してしまって。押さえつけたりとか、首を絞めたりとかして、傷害事件で来ました。」

事件に反して表情は穏やかで、話すとどこか幼さを感じる。少年は交際相手に暴力を振るい、傷害の罪で少年院に収容された。今回、自分の話を聞いてほしいと、取材に応じた。

(記者)「ここに来てどのくらい?」
(少年)「半年くらいです。今は慣れてきてますね。」
(記者)「これまでどんな非行をしてきた?」
(少年)「暴力とか窃盗とか、あと器物損壊ですね。」
(記者)「暴走族とか半グレの経験は?」
(少年)「ないです。どっちかっていうと暴力が多いですね。自分、他人とコミュニケーション取るのが苦手で、すぐぶつかっちゃうんです。」

物心つく頃から父親はおらず、ずっと母子家庭で育ってきた。小学生の時、母親の交際相手が同居するようになったが、少年はその男性からたびたび暴力を振るわれていたという。

(少年)「宿題を忘れた時とか、あとは(交際相手が)お母さんと喧嘩になった時に、げんこつで殴ってきたり、ビンタしてきたり。よく痣とかもできてましたね。お母さんが居ない時にしてくるんで、でもそんなんした後に優しくしてくるんですよ。」

母親の交際相手からの暴力は中学生になっても止まなかった。精神的に追い詰められていた少年は、自ら命を絶とうとしたこともあったという。

(少年)「ストレスとか、いろんなものが積み重なって。その時に友達のお母さんが来て、止めてくれたんです。」

■「IQ70台」支援に繋がらなかった境界知能

少年は子供の頃から落ち着きがなく、机にじっと座って授業を受けることができなかった。
学校ではいわゆる問題児だったという。

(少年)「ずっと立ち回ったり、外に出たりとかして、先生に怒られるために学校行ってたみたいな、よく別の場所に連れて行かれたりしてましたね。」
(記者)「勉強自体はどうだった?」
(少年)「ちんぷんかんぷんでした。九九とかも分からなかったし。」

少年のIQは70台。平均的な知能と障害の狭間にある「境界知能」に該当する。小学4年生の時、担任の教師から発達障害の可能性を指摘され、スクールカウンセリングを受けたこともあったが、本人はもちろん、家族にも自覚がなく、本格的な支援に繋がることはなかった。クラスでも浮いた存在だった少年は、よくいじめに遭っていたという。

(少年)「暴力はなかったんですが、仲間外れにされたり、嫌がらせされたり。そのときに先生に相談しても『そうなんか』で終わらせられて、相手にされなかったんですよ。そこからだんだん大人が信用できなくなりましたね。」

■愛された経験なく 心に傷を抱える少年

少年院では収容されてから2週間を単独寮で過ごし、そのあと寮を移り、集団生活に入る。だが少年はうまく馴染めず、イライラしたり、不安を感じて落ち込んだりすることが多かった。当時の日記にこう綴っていた。