フィンランドの学校で重視される“コーヒータイム”
教員間で気軽に話し合えるフラットな人間関係の構築のために、校長ら管理職は、様々な工夫をしています。教員同士が仕事で一緒にミッションをこなして連帯感を持てるようにする。何かの機会に親睦会を開く。校長自らが音頭をとって「職員室でバカ話をしよう」と呼びかける、などなど。
心療内科に通う女性教員もこう振り返ります。
東京都内の公立小教員
「もっと職場でたくさん話しあえるコミュニティといいますか、そんな集団を職場で作れるといいのかなと思います。実は、働き方改革やコロナ禍もあって、運動会など何か行事が終わったあとの教員同士の夕食会などはだいぶ減ったんです。時間外に“みんなでどっかご飯に行こう”とか言うのも、誘いづらくなりました。だから業務時間内にそういう時間が取れればいいんですけど、とても難しいと思います。一応、学校では夕方に“休憩時間”が設定されてはいますが、その時間に休んでいる先生はほとんどいません」
忙しい学校でも何とか休憩時間の確保を。そしてその時間をどう過ごすのか。もしかしたら参考になるかもしれないと思い、話を聞いたのは、フィンランドの学校で教員として勤めていた経験のある地下智隆(じげ・ともたか)さんです。
フィンランドの学校には休憩時間「コーヒータイム」がしっかりと確保されていて、精神疾患の教員を減らす効果があると語ります。地下さんによると、フィンランドの教員たちの精神疾患に関するデータはなく、問題視される状況にはなっていません。


地下智隆さん
「フィンランドではどの業種でも職場での休憩時間が重視され、コーヒータイム(kahvitauko)が法的にも義務づけられています。私が勤めていたフィンランドの学校現場でもコーヒータイムは大事にされています。これまでに40校以上の職員室を見てきましたがコーヒーマシーンとソファは必ずといっていいほど置かれており、休み時間になると職員室に先生たちが集まり、ゆっくりとした対話の時間が流れていました。
1日に2-3回ある、15分から30分のコーヒータイムは、お互いの生活のことを共有する時間にもなっており、職員同士のバックグラウンドを知ることにもつながっていました。また、日常のことだけでなく、クラスのことや授業のことで少し困ったことや一緒に考えたいことを気軽に同僚に話す機会にもなっています。私が勤めていた学校の職員室は、コーヒールームと黙々と仕事をする部屋が分かれており、コーヒールームは気さくにお互いに声をかけあえる雰囲気になっていました。

先生方にとって職員室は居場所の一つでもあり、授業中に感じたストレスや困りごとを発散できる時間が日常にあることが教員の精神的な健康に繋がっていると思いました」
地下さんには、印象に残っているフィンランド人校長の言葉があります。「学校長の最も大切な役割の一つは、私を含めた職員同士が気軽に相談しあえる環境をつくることです。職員室の環境づくりも私の大事な役割の1つです」。