冬が本番の、日本酒の仕込み。
その過程で出るのが「酒かす」です。
実は、この酒かす、栄養が豊富で身体もぽかぽか温まるという冬にぴったりの“スーパーフード”なんです。


長野県富士見町にある、宮坂醸造の酒蔵。

日本酒の仕込み作業が、今、まさに本番を迎えています。

蔵人 吉村正太郎(よしむら・しょうたろう)さん:
「とても寒くなる時期なので、その時に一番お酒がおいしく造れる時期でもある」

気温が低く、雑菌も少ない冬の期間に行われる、仕込み。

いまも多くの工程が蔵人(くらびと)による手作業で、冷え込みの厳しい早朝からの作業が続きます。

タンクの中で造られるのは、酒のもととなる「酒母(しゅぼ)」。

蔵人 吉村正太郎さん:
「酵母を育てる作業で、手をかけて育てれば、その結果いい香りが出たり、いい味になるという、手をかけた分だけおいしくなる」

この酒母を、蒸した酒米・麹とともに発酵させた「もろみ」を絞ると、日本酒ができます。

その「絞り」の作業を行う部屋では、ずらりと並んだ板から、蔵人たちが何かを剥がし取っています。


「板がす(板状の酒かす)をいま取っているところです」

板についているのが「酒かす」。

特殊な布のフィルターに圧をかけ、もろみを搾った“残り物”です。

仕込みとともにいまが旬の、この酒かす。

「かす」とはいうものの、名前とは裏腹に「栄養の宝庫」で、健康食材として注目されています。

酒粕研究家 さけかす子さん:
「1日50グラムを含んだ酒かす甘酒を摂取すると、善玉コレステロールの増加が期待されたり、便通改善とか、あとは肌のきめが細かく整うという報告がされています」

管理栄養士で、酒かす研究家の「さけかす子」さん。

東京で料理教室などを開く傍ら、新潟大学の大学院で酒かすの機能性成分の研究にも取り組んでいます。

酒粕研究家 さけかす子さん:
「酒粕にはお米由来の栄養成分が含まれているんですれども、その他に、発酵の過程によって増えているものがありまして、アミノ酸とかペプチド、またはビタミンB群や食物繊維などの成分が非常に多くなっています」


体の代謝を助けるビタミンB6は納豆のおよそ4倍、整腸作用が期待される食物繊維は、ゴボウとほぼ同じ量が含まれるといいます。

ペプチドによって血流が促進し、身体をぽかぽかさせる効果も。

酒粕研究家 さけかす子さん:
「ちょい足しみたいな形で、その食品の美味しさをアップさせるような使い方というのもできますので、日常に取り入れることで、“美味しくヘルシーな生活”ができるっていうところが一番魅力だと思っています」