サステナブルをリアルに体験

ウィファブリックはアパレル業界が抱える大量廃棄という社会的課題を解決しようと、オンライン上のアウトレットモールSMASELL(スマセル)を2017年から展開してきた。

スマセルでは本来であれば廃棄されるはずだった常時1000以上ものファッションブランドの服を、最大で98%の値引きをして販売している。購入手続きをすると、服を循環することで削減された二酸化炭素の量が可視化されるのも特徴だ。

代表取締役の福屋剛さんはアパレルの商社で約10年間ものづくりを経験して、ウィファブリックを起業した。オンラインよりもコストがかかるリアルの店舗で、かつ、ファッション以外も扱うSDGs複合施設を手がけた理由を次のように話す。

「世界中で毎年200億着以上もの服が捨てられていて、大量廃棄は石油産業に次ぐ環境問題の背景と指摘されています。気候変動の問題を解決しようとスマセルを展開しているものの、オンラインだけでは体験できる領域に限界があると感じていました。食やファッション、雑貨など全ての商品を何らかの形で環境にやさしいものにすることによって、ライフスタイルの中でSDGsを体験できる施設にしています」

ウィファブリック代表取締役 福屋剛さん

施設にはショッピングモールとカフェ、それにギャラリーの機能がある。1階には直営のセレクトショップとカフェがある。

セレクトショップには、パリなどで活躍する日本人デザイナーと取り組んでいる、バングラデシュのアパレル業界を支援する服が並ぶ。中国やベトナムに次ぐ規模のアパレル輸出大国となっているバングラデシュでは、新型コロナウィルス感染症が拡大した際に、3000億円もの発注がキャンセルされた。そこで、本来は出荷される予定だった無地の服に、現地で働く人に手縫いで刺繍を施してもらうことで雇用を生み出し、生産されたオリジナルの服を販売している。

バングラデシュで生産された手縫いの刺繍が入った服

カフェの店内と厨房は、中古のロンドンバスをリノベーションした。通常は捨てられている肉の切れ端や未利用魚などを活用したハンバーガーなどを提供する。

ロンドンバスをリノベーションしたカフェ

1階の半分と2階はテナントスペース。大手ブランドの廃棄されるはずだったサンプル品の服をはじめ、素材に牛骨を使うことで最終的には土に還る食器、スケートボードから作られた雑貨など、国内外からサステナブルなブランドが出店している。

土に還る素材で作られた食器
廃棄されたスケートボードは雑貨に

毎回購入するたびに100円が寄付される仕組みで、購入した人は100円相当の木のコインを受け取って、子ども食堂やウクライナの難民支援など、支援したいと考える団体のボックスに投函する。

寄付できる団体のボックスが並ぶ
100円相当の木のコインを投函