定例会見「ニューメディア席」狙いは?
小川彩佳キャスター:
トランプ政権の報道官の最初の会見が行われたわけですが、まずホワイトハウスの会見場はどういう場所でどんな雰囲気なんですか。

23ジャーナリスト 宮本晴代氏:
こちらが今回取り上げた報道官の最初の会見です。すごく、すし詰めになっていますが、意外と狭く、記者の席もすごく近いんです。私も入ったことがあります。私は前のトランプ政権のときにアメリカで取材していました。私達も入れるようになっています。
ですが、やはり最前列というのは、CNNやAP通信、CBSといったアメリカのいわゆる主要メディアが陣取るのが通例なんです。横の席は、普通はホワイトハウス関係者や政府のスタッフなどが座るところなんですが、ニューメディアの方たち、今まで入れてなかった人たちのためにここを開放しますというところが今回変わったところです。

藤森祥平キャスター:
そのニューメディアで、まず初めに質問したのが、ニュースサイト「アクシオス」で、2017年に創刊したアメリカでかなり影響力があるネットメディアです。中国の最新AI「ディープシーク」について質問をしました。2番目に質問した「ブライトバート」というメディアは、露骨なトランプ寄りのメディアなんですよね。「前政権と違ってトランプ大統領のスピードは破竹の勢い。このペースは今後も続くのか」という質問をしました。これにはどういう狙いがあるのでしょうか。
23ジャーナリスト 宮本氏:
このようなメディアを入れたことについてホワイトハウスは、「これは言論の自由なんだ」と言っています。アメリカは言論の自由が大事な国です。かつ、若者は今インターネットでニュースを見ています。そのためインターネットメディアも入れましょうというのがいわゆる建前です。

ですが、私は、本音には別の目的がもう一つあると思っています。もちろんニューメディアを入れて、開放していくというのは今の時代の流れで素晴らしいことだと思うんですが、一方で、既存のメディア、大手メディアは権力者にとって都合の悪い「ファクトチェック」をしてしまうわけです。なので、いわば権力者にとって邪魔なわけです。
最近で言うと、XやFacebookがファクトチェックをやめると言ったのも記憶に新しいです。つまり大手メディアがやってきたようなファクトチェックをしない、あるいはできないニューメディアをどんどん入れていくことは、もしかするとトランプさんにとっては都合が良いかもしれないですよね。
小川キャスター:
既存のあり方、通例がこれで崩れたということなんですね。
堤伸輔氏:
かつては50年間、最前列のど真ん中にヘレン・トーマスさんという名物女性記者が座っていたんです。89歳までその仕事をされた方なんですが、第1問は必ず彼女に当てるという暗黙の了解が部屋全体にあったわけです。
そのような古いしきたりが壊れて、誰もが入れるようになること自体は良いことだと思うんですが、2番目の「ブライトバート」というのは、トランプ政権の首席戦略官や補佐官をやったスティーブン・バノンという人が運営していたメディアで、完全にトランプ寄りのことしか伝えないメディアなわけです。
インフルエンサーやそういう人たちが、“よいしょ質問”を重ねていくと、結局世界で一番注目されるホワイトハウスの記者会見の価値そのものが損なわれてしまう。それは結果的にアメリカにとっても決して得になることではないと思うんですが、トランプ氏は1期目も同じようなことをやっていて、大手メディアを排除したこともありました。それをまた最初から繰り返してるんだなという感じですね。

23ジャーナリスト 宮本氏:
トランプ氏に近いメディアの、新興メディア「ニュースマックス」CEOは「人間は自分が真実だと思うものに飛びつく」と言っていました。トランプ氏が2020年の選挙で負けた後に、ずっと選挙は盗まれたんだ、不正があったとずっと言っていました。ここのメディアは、それをその通り報道していたんです。
それについて、事実はどうなんですかと問うたら、「結局人は事実だと思うものを見るでしょ、それしか見ないでしょ」という回答なんですよね。アメリカは日本以上に分断が進んでいて、日本だと、見てる人はテレビをつけても同じようなニュースではないと思うかもしれないですが、アメリカの場合は本当に違っていて、Aというチャンネルを見てる人はBというチャンネルを見てる人とは決して交わらないというほど分断が進んでいますし、今後も進んでいくんだろうと思います。