進む社会の分断「熱狂」と「抗い」と

二期目のトランプ政権発足で、アメリカ社会のあり方も大きく変わろうとしている。

一期目のトランプ政権が誕生した、8年前。女性蔑視や人種差別的な発言を繰り返すトランプ氏に歌手のマドンナさんら大勢の女性たちが抗議の声をあげ、ホワイトハウス前の通りを埋め尽くした。

しかし今回、就任式の当日に行われたデモでは…

村瀬レポート
「トランプ氏の就任に反対する人たちのデモ行進ですが、集まっているのは数百人程度でしょうか。それほど大きな広がりを見せていない感じがします」

デモ参加者
「多くの人たちは、がっかりしたのだと思います。以前は“抗議の声をあげる”という思いが溢れていました。でも、何も変わらない現実を見て、意味がないと思ったのでしょう。だから、8年前に参加した人たちは、今日は来なかった。デモに参加するリスクを怖いと感じる人もいると思います」

8年前のデモにも参加していたという女性。名前を尋ねると…

デモ参加者
「遠慮しておきます。トランプ政権は私たちのような人を攻撃対象にしています。名前が知れ渡るのは避けたいのです」

トランプ大統領
「人種とジェンダーを生活のあらゆる場面に社会的に持ち込もうとする政府の政策を終わらせる。アメリカ政府の公式方針として、きょうから性別は二つのみとする。男性と女性だ」

性別や人種、性的マイノリティに配慮し、多様性や公平性などを尊重する社会を目指す「DEI」について、こう宣言したトランプ氏。

バイデン政権が重視したこの政策を終わらせるとした上で、女性で初めて就任した沿岸警備隊の司令官を「DEIを過度に重視した」として解任した。

また、各省庁に対し、民間企業にDEIを推進する取り組みの停止を促すよう命じる大統領令に署名。すでに『マクドナルド』や『メタ』など、大手企業が取り組みを見直す方針に転じている。

“反DEI”の急先鋒に立ち、議論をリードしてきた人物がいる。活動家のロビー・スターバックさん(36)。

ロビー・スターバックさん
「反DEI運動は、DEIが新しい形の差別だということを経験した人たちから生まれたものです。私たちはキャンペーンを通じて、消費者がDEIを推進する企業の商品にお金を使いたくないということを示してきました」

大企業の取り組みに反対し、スターバックさんは「少数派が優遇されるのは不公平だ」として、SNSで不買運動を呼びかけてきた。

攻撃対象には日産やトヨタなど、日本企業も含まれているという。

ロビー・スターバックさん
「ある企業がDEIから撤退したと私が発表した48時間後に、株価が上昇した例もあります」

Q.DEIを根絶やしにするまで続けるんですか?

ロビー・スターバックさん
「このイデオロギーを排除するために、私はどんな手段も講じます」

アメリカ社会の間で急速に広がるこの動きに抗おうとする人もいる。ペンシルベニア州・フィラデルフィアに住む、レズリー・マーラントさん(57)。

2024年まで、フィラデルフィア警察でDEIを推進する担当官を務めていた。

レズリー・マーラントさん
「残念ながら、保守的な人たちにとってDEIは“Did not Earn It =自分の力で勝ち取らなかった”という意味になります。白人男性以外は“DEI雇用”と言われてしまう事があるんです。その意味は明確で、実績が無いにも関わらず、DEIの恩恵を受けているとみなされるのです」

現在はコンサルタントとして民間企業にDEIの推進を提唱しているマーラントさん。多様な発想を生み、ビジネスチャンスを増やすという観点から、今後も旗振り役を担っていきたいと話す。

レズリー・マーラントさん
「アメリカは偉大なる人種のるつぼです。均質な社会ではありません。圧力に屈するということは、人種差別がまかり通っていたかつてのアメリカに戻るということ。不正義の時代に逆戻りするということです」