経済が低迷する中国が新たな成長の起爆剤として期待を寄せるのが「低空経済」だ。一体どのようなものなのか?現場を訪れると、そこには「近未来都市」の姿が広がっていた。
高層ビルの間を飛び回る「宅配ドローン」
中国南部にある広東省・深セン市。民生用ドローンの世界シェア7割を誇る「DJI」も本社をおくこの街で、今あるサービスが注目を集めている。
「宅配ドローン」だ。
やり方はいたって簡単。スマホのアプリを使って欲しいものを注文する。
15分後、「ブーン」という音がする方向に目を向けると、高層ビルの合間をぬって箱をぶら下げたドローンがやってきた。


荷物を保管する、いわばロッカーのような役目を果たす「着陸スポット」に荷物を落とすと、ドローンはすぐさま飛び去っていく。
着陸スポットにある液晶画面に携帯番号の末尾4桁を入力して商品を取り出す。
ホットコーヒーを注文したのだが、箱の中でこぼれることもなく温かいコーヒーを受け取ることができた。

私が驚いたのは着陸スポットが公園などドローンが着陸しやすい、ひらけた場所ではなく、高層ビルに囲まれたオフィス街のど真ん中にあったことだ。
そこに約15分おきにドローンが飛んできて、オフィスワーカーたちが当たり前のように商品を受け取っていた。
「近未来都市のようだ」。ドローンが飛んでくるたび、興奮しながらカメラを向けるのは私だけ。
ドローンが行き交う街の風景は、深セン市民にとってすっかり日常になっているようだ。
深セン市の「宅配ドローン」は2021年から運用が始まり、これまでに36万件以上の商品輸送が行われているが、一度も事故は起きていないという。