地政学リスクの影響は? トランプリスクの懸念は?

――次は「地政学リスク」。中東情勢が緊迫していて、スエズ運河が通れず、喜望峰回りのルートをあらゆる船が通っているとか。
日本郵船 長澤仁志会長:
ご存知の通り一昨年の秋に、フーシ派が航海を通る船の爆撃を開始した。それ以来、最初はイスラエル関連の船ということだけだったが、無差別的な攻撃もありえたので2024年の初頭から喜望峰まわりという形で運航している。
――そうすると、距離も延びる、日数も延びる。すると客への値段も上げなければならない。船の運航効率も悪くなる、ということが起きているとか。
日本郵船 長澤仁志会長:
客には不便をかけていると思う。
――日本郵船がチャーターした船がフーシ派の攻撃を受けて拿捕される事件もあったが、あれは解決したのか。
日本郵船 長澤仁志会長:
残念ながら解決していない。一刻も早い本船・船員の解放を願うしかない。
――トランプ大統領が就任したら、この後国際的な物流が滞るのではないか、貿易がぐっと減るのではないかという懸念はないか。
日本郵船 長澤仁志会長:
1月20日に就任して、どういうことを発言するのか、注目されるが、今報道されているように関税を使って各国を牽制することは、多分間違いないと思う。一時的な影響はあるだろうが、世界で人口が増えていく中で、人々にいろんなものが必要になる。アメリカそのものの経済も強いと思う。そういった購買力を考えると、それほど心配することもないのかなと思う。物はどこかからどこかへ間違いなく流れていく。過去の経験でも一時的なものはあったが、しばらくすると元に戻っていく。そういうことだと思う。
――グローバル化からブロック経済になり、経済安全保障が強くなると、貿易がシュリンク(縮小)していき、物が動かなくなる心配はないか。
日本郵船 長澤仁志会長:
そこを心配して仕方ないと思っている。世界の人々が幸せで豊かな生活を送るために競争力あるところで、物が作られて、必要だという物が流れていくというのは、資本主義の通りだと思う。とすれば海上貿易・空輸は、物の流れが著しく減退するっていうことは考えにくいと思う。
――そういう意味では、海運業の役割は変わらず、責任を果たしていく。
日本郵船 長澤仁志会長:
それは間違いないと思います。
(BS-TBS『Bizスクエア』 1月18日放送より)