「トランプ2.0」前に“変わる社会” 企業から消える“多様性”
保守派のシンクタンク(ヘリテージ財団)の調査で、アメリカの大企業の96%が取り組んでいるという「DEI」。

「多様性=Diversity」、「公平性=Equity」、「包括性=Inclusion」、それぞれの頭文字から「DEI(ディー・イー・アイ)」と呼ばれる理念で、多様性や公平性などを尊重する組織や社会を目指すものです。
しかし、有名企業が相次いでDEI目標の撤廃や引き下げを発表しています。

ハーレーダビッドソン(去年8月の声明)
「現在、社内にDEIの任務はありません」

マクドナルド(6日の声明)
「私たちは野心的な目標設定を廃止します」
背景には、やはりトランプ氏が。凱旋集会でも…

トランプ次期大統領
「破壊的で分断を生む『Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)』の強制をやめる。政府と民間すべてにおいて、この国を実力主義に戻す」
こうした発言をたびたびしていたトランプ氏。
呼応するように、保守派の間にも「反DEI」の動きが広がりました。
その急先鋒に立つ人物がいます。
スターバック氏のSNSより
「DEIの方針をひっくり返した。新たな会社はマクドナルドだ」
「今こそトヨタの正体を暴く時だ。完全におかしな方向に進んでいる」
SNSの総フォロワーが、120万人を超えるインフルエンサーのロビー・スターバック氏です。

DEI政策を積極的に進めてきた大企業に攻撃の矛先を向け、「特定の人たちを優遇することで不公平を生み出す」と企業に対する不買運動をSNSで呼びかけています。
過去には、スターバック氏の投稿にマスク氏が返答したこともあります。スターバック氏の投稿で批判を受けた企業の中には、株価が下落するところもありました。
なぜ、企業のDEI目標を狙い打ちにするのか。

アメリカ南部・テネシー州の自宅には、撮影用のスタジオが設けられ、一角には
DEI目標を撤廃・縮小した企業の発表文が飾られていました。
その中には、日本企業のトヨタ自動車もありました。
インフルエンサー スターバック氏
「企業の何百万人、何千万人の従業員がフェアな職場で働けるようになったことへの誇りを感じさせるものなんだ」
スターバック氏は、キューバからアメリカに逃れてきた一族出身。ハリウッドで、ミュージックビデオの映像監督として活躍していましたが…
スターバック氏
「10年前にトランプ氏の支持を表明する決断をしましたが、当時のハリウッドではとても不評だった」
リベラルなハリウッドから、保守的な土地柄を求めてテネシー州に移住。
バイデン政権が重視したLGBTQの権利拡大や、マイノリティの登用促進などリベラルな政策が行き過ぎだと感じるようになり、1年前から批判のメッセージを積極的に発信するようになったといいます。

スターバック氏
「私の子どもたちが、マイノリティだから採用されたなんて思われたくない。採用されたのは実力なんだとわかってほしい。どのマイノリティも自分自身を信じるべきだよ」
当然、懸念の声も上がっています。
黒人農業者団体 会長 ボイド氏
「アメリカは白人だけの国じゃない。(顧客には)私のような黒人や、ヒスパニックの女性もいるんだ」
黒人農業者団体会長・ボイド氏は、DEI理念を撤回した農機具販売店には商品を「もう買いに行かない」と話します。
ボイド氏
「トランプがこの国で台頭し、より声の大きい白人のためのアメリカにしていっている」
ただ専門家は、アメリカでは広くDEIの理念は支持されていて、企業の間でも水面下で取り組みは続くと指摘します。

ジョージア・カレッジ&ステート大学 ジョアンナ・シュワルツ教授
「次の政権が何をするのか、誰も正確にわかっていません。だから、企業や人々は慎重な姿勢を崩さずにいようとしています」