被告の行為は「死体遺棄」に当たるのか 検察側と弁護側 異なる主張

グエット被告が問われた「死体遺棄罪」。

死体遺棄の定義については、検察側も弁護側も、「習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄しまたは隠匿する行為」としていて相違はない。

真っ向から主張が異なるのが、グエット被告の行為が「遺棄に当たるのか」という点だ。

検察側は、「被告は他者が死体を発見することが困難な状況を作出し、被告の供述などからその行為が埋葬の準備またはその一過程として行われたものではない」などと述べ、「男児をごみ箱内のごみと同列に扱うもの」「死者に対する一般的な宗教感情や敬けん感情を害するもの」とした。

そしてグエット被告に懲役1年6か月を求刑した。

検察側「望まない妊娠を他者に打ち明けることができなかった経緯に一定の酌むべき点があることなどを考慮しても、刑事責任は軽視できない」

出産した子は「浸軟児」だった

一方弁護側は、「遺棄」について、「死体の放棄・隠匿であればただちに『遺棄』に当たるというわけではなく、放棄行為自体の実質的意味が問われなければならない。遺体は被告自身が回収可能な場所に置かれていて、ごみ箱に入れても遺体に対する支配性は失われておらず、適時適切な埋葬を行うことを妨げたとは言えない」と述べた。

どういうことか。

弁護側によると、出産した子は子宮内で死亡した「浸軟児」だった。

法廷にたった産婦人科の医師は、「赤ちゃんのご遺体の表皮がむけている、そういった状況がございました」と証言した。

医師の証言によると、浸軟児の場合、「皮膚の防御作用がなくなって、身体の中に水がしみてくる。その赤ちゃんを子宮の中から取り出したときには、しみてきた水分が滴り落ちるとか、そういう水っぽい状況の身体になる。浸軟の発生頻度は比較的低く、浸軟の遺体に出会うのは数年に1回」だという。

グエット被告の弁護士「経験豊富な産婦人科医師ですら出会うことがまれな異常な遺体の状態、とりわけ、水を含んでいた状態も踏まえると、グエットさんが遺体をビニール袋に入れた行為を「習俗上の埋葬等と相いれない処置」ということはできない。そもそも、死体はむやみに人目にさらすものではないというのが一般的な宗教感情だと思います」

弁護側は、グエット被告の行為が出産直後だったことに言及。「肉体的・精神的に極限の状態でとりあえず取った行動にすぎない」「体力が回復し、周囲に相談して遺体をごみ箱から取り出そうと考えていた」とした上で、「グエット被告が遺体をあえて「投棄」しようとしたとはいえない」などと無罪を主張した。