女性のからだに合わせたメンズスーツ
一般的なメンズスーツは、男性の骨格に合わせて作られていることから、女性が着るとかえって骨盤が目立ったり、骨盤に合わせるとお尻の布が余ってしまったりと、市販品では体型的にきれいに着こなすことが難しいそうです。
一方レディーススーツは、女性らしいからだの曲線を強調するパターンが多いため、違和感を感じる人もいるようです。
そこで、田中さんは女性の体型に合わせたオーダーメイドのメンズスーツブランド「keuzes(クーゼス)」を立ち上げました。
「keuzes」とは、オランダ語で“選択肢”を意味します。
keuzesは、東京・渋谷区にショールームを設けていますが、渋谷のショールームに来られない依頼者には近所の会議室を借りて採寸し、全国各地の依頼を受けています。


トランスジェンダー大学生が抱く成人式への想い
今年、成人式に参加する大学2年生の榎本春音さんは、keuzesでメンズスーツをつくった一人です。
生まれたときの性は女性で、昨年9月に胸を切除する手術を受けたトランスジェンダー男性です。
keuzesのスーツに出会う前の、成人式に対する思いを聞きました。
大学2年生・榎本春音さん
「今生きている性別と、かつて中学校のときの自分の性別というのが変わってくる、その周りからの認識が変わってくるので、そういう中でもう一度中学校のメンバーとか人間関係と出会うっていうことに不安もあって、成人式はなかなか踏み出せないようなそういう行事にもなっていたかなと思います。私の場合は、高校の頃から男子制服を着ていたりもしたので、両親も何となく振袖は着ないだろうと思っていたみたいなんですけれども、やはり振袖を着る雰囲気が強い中でそこを選ぶっていうことに対するハードルっていうのは少しまだあったのかなというのはあります」

榎本さんは、メンズスーツを取り扱う大手量販店でも試着を試みたそうですが、やはり体にも、イメージにもフィットするものには出会えず、昨年6月に兼ねてから憧れていた「keuzes」でスーツをオーダーしました。
からだのラインが協調されないように、且つ体型にフィットするよう細やかに作られた「keuzes」のオーダーメイドスーツを取材の日も着てきてくれました。
榎本さんは、高校生のときに周りの方にトランスジェンダーであることをカミングアウトし、手術を終えて以来、現在は成人式を前向きに捉えられていて、自治体の成人式の実行委員にも積極的に参加しています。
取材中も、終始晴れやかな笑顔で受け答えする溌溂とした様子がとても印象的でした。