今回のトランプ氏の発言は前回同様“外交術の一環”なのか

実際には、予算の多くをデンマークからの支援に頼るグリーンランドがすぐに独立する、というのは現実的ではない。デンマーク政府に対して辛辣なコメントをしていたブロベルグさんも「たとえ独立したとしてもデンマークが最も近いパートナーであることは変わらないだろうし、グリーンランドはNATOの一員であり続けるだろう」と予見した。

一方、同じ海辺で話を聞いた独立活動家のリリ・ケミニツさんは「選択肢は限定せず、一番良い条件を出すところと一緒にやるべき」との意見だった。デンマーク王立防衛アカデミーのイェップ・ストランベルグ助教も「中国などからの関心をレバレッジにして、アメリカやデンマークからより良い条件の投資を引き出すこともできる」と指摘した。

これまで「低く見られてきた」グリーンランドの人たちは、トランプ氏と温暖化がもたらしたスポットライトをうまく利用していきたいと考えているのだろう。

では、トランプ氏のグリーンランド領有の本気度はいかほどなのか。

2022年の取材時、ストランベルグ助教は2019年のトランプ氏の「グリーンランドを買ってもいい」発言について「アメリカが、デンマーク政府に対して“もっとグリーンランドの防衛に力を入れるべきだ”と求めると同時に、世界、特に中国に対して、グリーンランドに手を出すな、と宣言したのだろう」との見方だった。つまり、外交術の一環だ、と。

今回も似たような分析が聞こえてくるが、トランプ氏が再度言及したことで、「あれは一過性の思い付きではなかったんだ」との印象を与えたことも確かだ。

トランプ2.0に、北極圏もザワついている。