「植民地マインド」から抜け出そうと動くイヌイットの女性
「この社会システムは、劣等感を植え付けるんです」
そう話すのは、50年代の「実験」に参加させられた児童の一人を母親に持つパニングワクさんだ。グリーンランドの非常に高い自殺率も、蔓延するアルコール依存も、デンマークの支配によって再生産される「自尊心の低さ」が影響していると言う。
「すべてが植民地支配のせいだとは言いませんが、影響はあります。人口500万人の社会(デンマーク)の制度が、わずか5万人の、全く違う文化を持つ社会にコピペされたんです。うまくいくはずがありません」
「言葉を否定され、文化を否定されれば、死にたくなるのも当然です」
実はパニングワクさんも10代の時、二度、自殺未遂をした。酒も13歳から飲むようになった。家族も止めなかった。テレビや雑誌に登場する女性は美しい白人のデンマーク人ばかり。イヌイットのロールモデルはメディアの中にも、周囲にもいなかった。
「素敵な人生なんて私には訪れないんだ、と絶望したんです」
それでも二度目の自殺未遂の後、心機一転、アルコールを絶ったパニングワクさんは、イヌイットのルーツを意識することで自分を取り戻していく。伝統的な刺青を入れ、独立を訴えるアクティビストになった。独立したら全てが解決するわけではないが、「植民地マインド」から抜け出すスタートになるはずだ、と確信している。
「親世代、とりわけ女性は声高に主張することを避けてきましたが、自分たちの世代で負の連鎖を断ち切るんです」
「これは自分の子供たちのためでもあります。そして、若い人たちのロールモデルにもなりたいんです」














