アメリカ兵が起こしたタクシー強盗事件でけがをした運転手の男性の遺族が、見舞金や遅延損害金を国が支払わないのは違法だと訴えていた裁判の上告審で、遺族の訴えを退ける判決が最高裁で確定しました。この事件は、2008年に沖縄市でタクシー運転手の男性が乗客のアメリカ海兵隊員2人にビンで頭を殴られるなどの暴行を受けたものです。

2018年に、那覇地裁沖縄支部はアメリカ兵2人に対して遅延損害金を含めた損害賠償金およそ2640万円の支払いを命じていました。

1996年のSACO(サコ)最終報告に基づく見舞金制度では、裁判で確定した賠償額をアメリカ側が支払わない場合は、日本政府が肩代わりすることになっていますが、沖縄防衛局が遅延損害金の支給を拒否したため、遺族がその違法性を訴えていました。

この裁判の上告審で最高裁判所はきのう、見舞金受け取りの「受諾書」が遺族から提出されていないため、防衛局が見舞金を支給していないことに違法性はない、として遺族の訴えを退けました。一方で判決では、三浦守(みうらまもる)裁判長が沖縄防衛局長が見舞金を支給しないことは「違法とまでは言い難い」としつつ、受諾書の提出を条件にして見舞金を支給しないことは、「信義則上の義務に違反」し遺族らの「法的利益を害する」と沖縄防衛局の対応を批判し、制度の問題点を指摘しました。

<取材MEMO>本来罪を償うべき加害者が賠償責任を果たさないこと、日本政府が肩代わりすること自体が問題ですが、被害者救済が送れた遅延損害金を支給しようとせず、それに納得しない遺族に見舞金自体を支給せずさらに救済を遅らせてきた沖縄防衛局には、今後対応を是正することが求められます。