主人公から学ぶ“かけ違わない”方法

“愛のかけ違い”から起こってしまった出来事と向き合うストーリーの話し合いを重ねて作り上げた2人に、思いが食い違わないようにする方法を尋ねてみた。「とにかく話すこと。打ち合わせでもたくさん話しましたし、その帰り道にも話して、今洸人たちがどういう状況に置かれているのか互いに把握するようにしていました。長く脚本を書いていると、調子が出ないときもあれば、スルスルと書けることもある。しかも本作ではヒューマン部分を大切にしたからこそ、人の気持ちの積み上げ方を間違えてしまうと、全く違うストーリーになってしまうという難しさもありました。なので、一戸さん、松本プロデューサーと『こういうところが難しいよね』『洸人はここで何を考えているのかな?』とコミュニケーションを密にすることを心がけました」(徳尾さん)。
一戸さんも「人間同士の心のかけ違いはどうしても起こってしまうものですし、相手の心は目に見えて全て分かるわけではない。この作品作りにおいての打ち合わせでも、生活においても、“かけ違いは起こってしまうもの”と客観的に知っておけば、少し想像力が働くようになるのかなと。主人公の洸人は、相手が弟だから、子どもだから、同僚だからという分け方ではなく、目の前の人と丁寧にコミュニケーションを取っているなと、改めて本作を見て思いました。こういう生き方ができたら素敵だな、こういう生き方を自分もしたいなと考えさせられます」と自分たちが作り上げたキャラクターから学ぶこともあったという。

物語の中盤以降は、登場人物たちがどのような動きを選び取っていくべきか判断に迷うことが多く、気持ちに寄り添いながら物語を作っていくことに苦労したという徳尾さんと一戸さん。多くの話し合いと、「良いドラマを目指しましょう」という目標があったからこそ、2人の間、プロデューサー、監督、現場との“かけ違い”が起こらず、よりよい表現が生まれたのだろう。そんな彼らが紡いだ物語の最後はどんな未来が待っているのか――。