今回の台風14号では、気象庁は「経験したことがない暴風・高波・高潮のおそれ」と異例の呼びかけをし、「過去最強クラス」とも呼ばれました。鹿児島では結果的に大規模災害には至りませんでしたが、気象台や専門家は「避難や防災対策が無駄だったと思わないでほしい」と訴えます。

鹿児島県内に上陸し、各地に爪あとを残した台風14号。

(17日の気象庁会見)「経験したことがない暴風・高波・高潮・記録的な大雨のおそれがあります」

気象庁は、沖縄以外では初めてとなる台風による特別警報を県内で発表し、「最大級の警戒」を呼びかけました。

台風14号は、17日には九州の南の海上で中心気圧が910ヘクトパスカル、風速は55メートルと、「猛烈」な勢力に発達。当初は勢力を維持したまま県内に接近するとみられ、伊勢湾台風などに匹敵する「過去最強クラス」とも言われましたが、北上するにつれ、徐々に勢力を落としました。

18日に鹿児島市付近に上陸した時には、勢力は「非常に強い」でしたが、中心気圧は935ヘクトパスカルで、1951年の観測開始以来、4番目の低さでした。

当初の想定より勢力を落とした背景について、気象台は、想定よりも東寄りの陸のコースを北上したことが一因と話します。

(鹿児島地方気象台・篠崎覚気象防災情報調整官)
「台風の勢力を維持・発達させる要因は(海上の)水蒸気。陸地に上がると水蒸気の取り込みが弱まるので、発達が抑えられる。九州西海上を通ったら海水温高い状況だったので、かなり強い勢力保ったまま北上したのでは」

県内では一時、48時間で1000ミリ近くの特別警報級の雨量や、線状降水帯の発生も予想されました。実際には線状降水帯が発生したのは宮崎と熊本で、県内の総雨量は錦江町の465.5ミリが最大で、県内で大雨の特別警報の発表には至りませんでした。

(鹿児島地方気象台・篠崎覚気象防災情報調整官)
「台風は反時計回転するので、より一層、宮崎県への(雨雲の)流れ込みが続いた。九州山地があるので、そこにぶつかって雨雲が長く形成されたのでは」

また、当時、海岸や海岸近くの川は水位が上昇したものの、大潮ではなく小潮だったこともあり、記録的な高潮には至らなかったとみられています。

それでも県内では各地で土砂崩れや倒木、住宅の損壊などが相次ぎ、県のまとめでは18人がけが、避難所への避難者数は一時最大で1万5000人近くに上りました。

一方で、街ではこんな声も…。
「前もってニュースで、今までにない台風と言っていたから、どんな台風だろうかと。思ったより被害が少なかった」

「(Q何か対策は?)戸建てではなくマンション住まいだから、特に対策はしなかった」

こうした声に専門家は…。

(京都大学・矢守克也教授)
「当初予測されたほどの大被害にはならなかった。運がよかったに過ぎないという捉え方をするほうがいい」

京都大学で防災心理学を研究する矢守克也教授は「避難や防災対策が無駄だったとは思わないでほしい」と話します。

(京都大学・矢守克也教授)
「せっかく逃げたのに無駄足だった、骨折り損だったと否定的に捉えず、自分たちの防災対応にどんな問題があったか検証ができたと、素振り=練習ができたと捉えるのが大事」

気象台も「台風の進路などが少しでも違っていれば、鹿児島で大規模な災害もあり得た」と強調します。

(鹿児島地方気象台・篠崎覚気象防災情報調整官)
「台風予報は不確実性を持って予想するもので、早めの防災対応をすることが重要」

しばらく続く台風シーズン。今回の経験を無駄にせず、命を守る備えを今のうちにしておくことが大切です。