築83年で国の有形文化財にも登録されている鹿児島市の鹿児島県民教育文化研究所。維持管理が難しくなり11月から解体される予定でしたが、解体中止を求める嘆願書が市民団体から出されたことなどを踏まえ、解体が半年間、延期されることになりました。

鹿児島市春日町にある鹿児島県民教育文化研究所は、繊維雑貨卸業を営んだ豪商・藤武喜助が1939年に建設した木造一部2階建ての近代和風邸宅です。

1960年に県教育会館維持財団が買い取り、1981年から鹿児島県民教育文化研究所として使われてきました。玄関の入口には、初代所長を務めた児童文学作家の椋鳩十が書いた看板が掲げられています。

曲がり木を生かした手すりや繊細な組子の建具、藤武喜助にちなんだ藤の花の欄間や竹の格子など風情あふれる趣向が随所に見られ、2014年に国の有形文化財に登録されました。

しかし財団は維持管理が難しくなり、売却先も見つからなかったため、11月から解体し、老朽化が進む鹿児島市山下町の県教育会館の建て替え場所にすることを決めました。

これに対し、市民団体の「鹿児島の古い建物や街並みを活かす会」は、今月2日に解体中止を求める嘆願書およそ2000通を提出。22日はさらにおよそ2000通を追加で提出しましたが、その際、財団は解体を来年4月末まで延期すると回答しました。

(鹿児島の古い建物や街並みを活かす会 砂田光紀代表)
「まずは解体をいったんとめることができた。建物としての価値ですね。まちづくりとか教育とか、観光とかいろんな視座で生かしていける」

ただ財団は、土地と建物の売却先を探すのに協力するよう団体側に求めたうえで、来年4月までに売却先が見つからなかった場合は、予定通り解体する方針を伝えました。

鹿児島市教委によりますと、登録有形文化財の場合、制度上、解体などの判断は所有者の意向が優先されるとしています。

(鹿児島の古い建物や街並みを活かす会 砂田光紀代表)
「約半年間、みんなで建物を残すために協力しながらアイデアを出し合う必要がある」

一方、建物の解体については、22日の県議会一般質問でも取り上げられ、市民団体から嘆願を受けた塩田知事は、財団に嘆願書に沿った対応を要請したと明かしたうえで、次のように述べました。

(塩田知事)
「県としては県が自ら取得し、活用することは難しいと考えているが、今後、財団や嘆願書を提出した団体から保存活用に向けた協力の依頼があれば、内容を精査したうえで対応を検討したい」

解体はいったん先送りされたものの、来年4月の期限までに売却先は見つかるのか?建物を巡る動きは、これからが大きな山場となります。