進む中国軍の拠点化・・・JNNのカメラが捉えたカンボジアに停泊する中国軍艦

私たちが向かったのは、シアヌークビルからほど近いカンボジア南部にあるリアム海軍基地。そこに2隻の中国軍のコルベット艦が停泊しているのを確認した。

リアム海軍基地は中国の支援によって拡張工事が進められており、アメリカや日本などは中国軍の海外拠点になるのでは、と警戒感を強めている。今年6月にはアメリカのオースティン国防長官がカンボジアを訪れ、直接懸念を伝えている。

港だけではない。先ほどの習近平通りを郊外に向かって走ると、8月に開通したばかりの運河にぶつかる。フナン・テチョ運河。将来的にはプノンペンからタイ湾に面した港まで約180キロに延伸する計画だ。建設の一部を中国企業が請け負っている。運河の入り口ではすでに中国企業の工場が稼働していた。

内陸部と沿岸部をつなぎ、物流コストの削減、産業の活性化の役割が期待される一方で中国海軍による軍事利用を警戒する声がベトナムなど周辺国から上がっている。さきほどのリアム海軍基地は、運河の近くにある。

フナン・テチョ運河

進む中国軍の拠点化にカンボジア市民の間では米中の軍事対立に巻き込まれるのではないかという不安が広がっている。

カンボジア人男性
「中国との軍事的結びつきが強化されることを恐れています。いつか軍事衝突の発展するのではないかと恐れています」

経済、そして軍事。カンボジアを覆う、中国の影。その影響力はこの国をどこに導いていくのだろうか。

取材後記

中国と地理的にも近く、また経済的結びつきが強い東南アジア。しかし「東南アジア」と一言で言っても、中国との距離感は様々だ。南シナ海の領有権をめぐり激しく中国と争っているフィリピンのような国もあれば、中国に接近するカンボジアのような国もある。中国ともアメリカともつかず離れずの立ち位置を保つインドネシアやベトナムのような国もある。

ただ、いずれの国にとっても「中国とアメリカ、どっちにつくの?」と踏み絵を迫られる状況が一番困るという。トランプ大統領の再登場で再び米中関係に波乱が起きることが予想される。その中で東南アジアの国々はどのような立ち位置でその波を受け止めるのか。東南アジアは、米中関係の今後を占う視点でもある。

文 JNN北京支局 立山芽以子
撮影 JNN北京支局 室谷陽太