生後4カ月で亡くなった長男

長崎県五島市奈留島に住むカネミ油症患者の岩村定子さんは、今回の映画に登場する被害者の1人です。汚染油を口にした後に生まれた長男・満広ちゃんは、口唇口蓋裂や心臓疾患などの先天性疾患を持ち、生後4カ月で亡くなりました。

岩村さんは「自分が汚染油を食べたことが原因ではないか」と考え、満広ちゃんのへその緒を分析するよう、九州大学を中心とする油症治療研究班に依頼。その結果は「農薬が混ざった可能性がある」という不可解なものでした。

岩村さんには、亡くなった満広ちゃんの下に2人の子どもがいますが、全員油症患者には認定されていません。

映画が描く現在進行形の課題

映画では、満広ちゃんのへその緒の再分析を別の機関に依頼する様子や、油症患者の認定を行う長崎県職員が、岩村さんの家を訪れやり取りする様子などを記録、今も続く被害者の壮絶な苦しみを訴えると同時に、行政や研究機関の対応への疑問も描き出しています。