一世を風靡した船井電機…なぜ業績が悪化し、迷走したのか

FUNAIブランドで一時代を築いた船井電機は、1961年、ミシンの卸売業を営んでいた船井哲良氏が創業しました。

1990年代に入り、テレビとビデオが合体した「テレビデオ」で一世を風靡すると、2000年代には「液晶テレビ」の生産を開始。
高機能ではないが、低価格で品質は悪くない──そんな特性が支持され、北米でトップシェアを獲得するなど、一時は大手メーカーをしのぐ利益率を誇る企業に成長しました。
1代で世界の船井を築き、カリスマと呼ばれた哲良社長は1999年、取材に次のように答えています。

船井電機 船井哲良 社長(当時)
「こういう機会を通じてできるだけ皆さんに説明して、株主からのいろんな意見を参考にしながら経営を進めていきたい」
しかし、その後は中国企業などとの価格競争に敗れ、業績は悪化の一途。哲良氏が亡くなると、創業家は外部の経営者に立て直しを託します。

白羽の矢が立ったのが、コンサルタント会社出身で出版会社社長の男性。新たな経営陣がまずとったのは、船井電機の上場廃止でした。
この動きに、企業の信用調査をする会社の担当者は疑問を呈します。

東京商工リサーチ情報部 山本浩司 部長
「上場していると報告義務があるので経営の透明性が保たれるが、非上場になった場合、まったくクローズなのでわからない。自分の好きなようにやりやすくなる」

そして船井電機は2023年、大手脱毛サロンを買収するなど事業の多角化を進めますが、経営は迷走します。本業の赤字に加え、巨額の資金流出があったというのです。
東京商工リサーチ情報部 山本浩司 部長
「破産を申し立てた時点では、現預金がほぼすっからかんになっていた。約300億円の資金が流出したと」

流出したとされる資産300億円について、破綻直前まで社長を務めていた男性は、JNNの取材に対し「私的な出費など不正を働いた理解は一切ない」としています。

そして10月24日、突如発覚した経営破綻。創業者の親族で取締役の男性が、取締役会の決議を経ずに単独でできる「準自己破産」を申し立てたのです。その日のうちに東京地裁が破産開始を決定する、異例の展開でした。