選挙プランナーが語る「選挙とSNS」 運用の線引きとは?

小川キャスター:
SNSの運用について、気を付けていることもあるそうですね。
選挙プランナー 戸川さん:
「(SNS運用を)代わりにやってほしい」と言われることはありますが、代わりにやってしまうと、今回の件と同じで期間中であれば買収になりますので、基本的に外部に頼むという発想はやめたほうがいいと思います。
事前であれば何とかできますが、選挙が始まった瞬間に自分たちで回さなくてはいけなくなりますから、陣営の若い人や得意な人を着実に育てて、ポジションを持って回せるように構築していくことが重要です。

藤森キャスター:
戸川さんによると、SNS運用については、▼アカウントの立ち上げ、▼候補者の指示による撮影や画像の作成はOKですが、▼アカウントの管理・自ら投稿、▼動画の内容に関するディレクションなどはNGだということです。
選挙プランナー 戸川さん:
今までSNSを使ったことがない人であれば、アカウントを作ることすらできないかと思いますので、「代わりに作ってくれ」というのは、「電池を買ってきてくれ」とあまり変わらないので、代わりにアカウントを作成するのは良いでしょう。
作ったら「あとはやってください」とパスワードなどの権限を渡します。外から見て上手くいっていなさそうであれば、「もう少し(更新)頻度を上げた方がいいのでは」などの指摘はするかもしれませんが、ずっと持ち続けて24時間スマホを離さないとか、神経をすり減らしてやるようなことはまずありません。
真山仁さん:
準備まではOKですが、ブレーンワークになるとNGです。コンサルは(選挙が)始まる前までと決まっているので、線引きはよく分かります。怖いのであれば、全部自分でやりましょうということだと思います。
藤森キャスター:
ここのところ選挙の中で大きなキーワードになっているのがSNS戦略だと思います。SNSが選挙で使われるようになって10年以上経っている中で、これからどう向き合っていけば良いのでしょうか。

真山仁さん:
今までSNSは文字がメインで、いわゆる言葉で発信していた間は割と政治では軽く見られていました。この1、2年で動画が使われるようになり、切り取ったり加工したりできるようになりました。やはり動画は人の感情を喚起するのにすごく重要です。
ある意味、法律違反さえしなければ、どんな煽り方をしてもいい、どう作ってもいいということになってきて、今回の選挙で「SNSで動画を発信すればこれだけ効果的なんだ」ということを証明したと私は思います。
ただ、言論の自由の問題や、あくまでSNSは個人のものだということがあり、規制するとなるとマスメディアももっと厳しい規制の中に入ってしまうので、規制は単純なものではないと思います。
小川キャスター:
デマ情報の拡散や誹謗中傷などの影響がどんどん大きくなっていて大変な問題だと思いますが、どう向き合っていきますか。
選挙プランナー 戸川さん:
今回の知事選ではアカウントが停止されることが2回あったということですが、そもそもアカウントがないと発信できないので、スタート地点に立てないということで非常に問題だと思います。Xなどは一定数の通報があると、中身をあまり吟味せずに自動的にアカウントが停止されるようなことがあるので、それを逆手にとって悪用している事例もたくさんあります。
これは選挙に限らず一般のマーケティングでもよくあることですが、特に選挙では発信できないと著しく不利益が大きいので、対策をする必要があるように思います。ファクトチェックをしないと、“言った者勝ち”になってしまいます。
今の法制度でも対応は可能ですが、時間がかかりますし、実効性に乏しいので、新たな枠組みを作ることは必要かもしれません。
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<プロフィール>
戸川大冊さん
選挙プランナー 選挙法務など専門の行政書士
先月の衆院選をはじめ15年以上選挙に携わる
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
選挙コンサルタントを主役にした「当確師」を執筆