「私は今日のことしか考えられない…。絶望感はすでに限界」

今月16日、食糧支援物資を積んだトラック109台がガザ地区に入った。しかし無事に目的地まで到着したのはわずか11台だった。途中略奪に遭ったのだ。

ガザで活動する医師もう一人は日本人だ。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保険局長を務める清田明宏氏は、略奪も一様に責められないという…。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) 清田明宏 保険局長
「本当に厳しい状況の中でちょっとしか入ってこない食料を略奪する、あるいは高価で売るということを現地の人たちのせいにするのは非常に酷だと思います。(中略―――物資不足は)危機的でして、例えば暑い夏で湿疹が出る、あるいは熱が出て解熱剤は必要である…。その人たちに処方する薬がない。

我々はいったい何をやってるんだっていう非常に悔しい思いをしています。我々既に薬は購入していて、ヨルダン、エジプトに在庫を置いていて、きちんと運べる時をまっているんです。平均で9か月以上の薬の量を確保している。例えば全部搬入できたら明日から薬の枯渇は全くなくなるんです」

食料も薬の輸送できずに物資不足が続く。略奪したものを高値で売ることで卵一個1500円ということもある。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) 清田明宏 保険局長 「ある人が言ってたんです。私は今日のことしか考えられない。明日のことは考えられないって…。つまりそんな余裕もなければ、考えたとしても何も解決できない。だったらもう今日のことしか考えない。絶望感はすでに限界…人間が考えられる絶望をすでに超えていて、絶望感すら感じないように過ごしているのではないかなぁと…。このようなことが21世紀の世界で起こっていいのかと非常に強く思います

今回の悲劇的な状況を生むきっかけとなったのは10月7日のハマスによる武力攻撃だ。

このことを一般のパレスチナ人はどう思っているのだろうか?

明治大学 ハディ ハーニ特任講師
「(ハマスを支持するか否かは)これは死生観に関わる問題。(ガザのパレスチナ人はイスラエルに)人間の尊厳を踏みにじられる恰好で少なくとも十数年やってきたわけです。この状態でもとにかく生き延びることを選ぶのか、尊厳を取り戻すために抜本的(変革)なものを求めそのためなら命を投げ出すのか…

つまり抑圧され我慢の限界に達し、この状態で生きてるくらいなら死んでもいいから勝負に出ようという人はハマスを支持し、今まで通り抑圧されようと、とにかく生き延びることを優先する人は“ハマスなんてことしてくれたんだ”と思う。

明治大学 ハディ ハーニ特任講師
「世論調査では(両論)推移しますがハマス支持が増えたこともある。真綿でじわじわ首を絞められるように死んでいくのか、あるいは今なにか光を見出そうとするのか…」