Q:今回、秋田の学生さんにも一部、撮影を任せたのはなぜ?
やっぱり、僕の好きな監督で、もう亡くなってしまいましたけど 相米慎二監督っていう方がいて、僕が「風花」という作品を一緒に撮った時に、監督はどのスタッフも平等に扱ったんです。扱っているのではなく、それが普通の監督のスタイルでした。
だから、本番回してカットかけて、誰も普段は、あまり声をかけないような 照明部の一番下っ端の子に、「今のどうだった?」って聞くんですよ。
「いやあ あんまり…」っていうと、「何々くんが面白くないっていうから、もう1回だよ!」って(笑) 結局、別にキャリアの話じゃないし、いっぱい映画を撮ったからって、うまくできるわけでもないんですよ。
(ミラーライアーフィルムズのように)学生の方が、映画の撮影現場にいるってことは 我々がもう忘れてしまった「何か」を、必ず持ち込んでくれているから…、学生さんがいることで気持ちがリフレッシュできますし、ちょっと試しに 何かやって頂いたり アイディアをもらったりして、「これって本当に入れるべきアイディアだったね」ということがやっぱりあったりするんですよ。
Q:映画業界として、もう少しこうなったら良いな・・・みたいな想いはありますか?
浅野:やっぱり…SNSがあることで、世の中やっぱりある種、「平等化」じゃないですけど、どの国に行っても、ある程度、国のことがわかるから、ある種の「共通の常識」だったり いろんなものが みんなの中に植え付けられたと思うんですけど…
だからこそ、(当たり前とされているものに)「疑問」を持ってほしいし、何か映画でも、「何が本当はやりたいんだろう」って考えたいなと思うんですね。
そうするとやっぱり、「長さ」は自由でいいし、もう1つは、それはまさにSNSとかで確認すればするほど、世の中はもう映画以上のことが溢れているんですよね。とんでもない事件だったりとか、とんでもない喜びだったり、いろんなことに溢れてて、映画が追いついてないような気がするんですね。
だったら、映画の持っている強みを生かして、「人の夢の話」でも撮って、不可思議な物語とか、 さらに何か違うイメージを共感してもらえるような事って、できないかな?とは思いますけど。やっぱり、「ありきたりの物語」は 追いついていないような気がするというか… はい。
Q:「エミー賞」の授賞式で、ステージ上にいる方たちを見ると、もう頂点に登り詰めたと満足しても良い気もするのですが、それでもなお、ものづくりにどん欲ですね…
浅野:そうですね… 些細なことがやっぱりずっと気になりますし、元々 根がミーハーなんで、誰かが面白がっているものは 僕も経験してみたい! っていうのは常にあるかもしれない。
僕は、そういう気持ちがあって ありがたいなと思います。
Q:これから「男と鳥」を観る人に対して、メッセージをお願い致します
浅野:そうですね… 本当にパッと見は よくわからない作品かもしれないですけれど、よく見てもらうと「現場の喜び」っていうのは 随所に散りばめられているので、何かそれを感じてもらえれば嬉しいなと思います。

今回、「男と鳥」で重要な役割を果たしているのが、衣装・特殊メイクを手掛けたアーティストの快歩(かいほ)さん。
今年「Forbes JAPAN」が発表した「世界を変える30歳未満」にも選ばれていて、King GnuやOfficial髭男dism、きゃりーぱみゅぱみゅ、藤井風、Vaundyなど、著名なミュージシャンのミュージックビデオで「独自の世界観」を創り続けています。
Q:「男と鳥」で衣装・特殊メイクを担当した 快歩さんについて
いや~ 頼もしいなと思いますね。本当に…快歩さんに限らず、スタッフも含めてみなそうですけど。僕がなんだかはっきりしない答えをずっと出し続けてる中で、撮影して、(イメージを)形にしてくれて… 僕が考えたかのように何か作ってくれているわけですから… 「なんか大丈夫なんだな」と思って。
普段 俳優でね、現場を見てると、細かいことを全部考えてる監督って、いっぱいいると思うんですね、もちろんそれは正しいと思うんですけど、でもきっとスタッフが、何とかしてくれますよって思っていたんで…
特にそうやって若い人たちが、今回、「何でもやってくれる」っていうのを確認できたから、自分の声が通るのだったら、どんどん、そういう人たちにお願いしたいですね。はい。
Q:ビジネスの世界だと、若い世代に教えるよりも、自分でやった方が楽…という人もいますが、 なぜ浅野さんは任せられたのか?
そこはもしかしたら、僕が俳優だからかもしれないすね、やっぱり… ある種、無責任な部分が出ちゃってると思うんですけど、もしかして僕が真剣に監督だけでやっていたら、任せられないこともあるのかもしれないですけど、僕は別に監督で有名になる必要もないし、この後、映画を撮り続ける必要もないんで…
僕が監督をやるんだったら、普段 監督にこうあってほしい…みたいなことも含めて 今回「男と鳥」で何かできればと思ったんですね。
撮影現場がまず一番の観客で、普段 俳優として演じていて、目の前のスタッフが「クスッ」と笑ったり、泣いてくれたりしていない日は あれ? これ劇場やばいな・・・と思うんですね。
でも、その日にスタッフが1人でも泣いたり笑ったりしてくれて、撮影の後に 「浅野さん 今日すごい良かったです」 って言われたら、「いける!(笑)」って思うわけで… その瞬間をね… やっぱり現場で常に芽生えさせたい。

【担当:芸能情報ステーション】