総務省から“根回し”あった? 元総務大臣が裏側語る

良原キャスター:
一方、この問題について物議を醸していることがあります。年収の壁の引き上げをめぐり懸念の声が広がるなか、「総務省の“根回し”があった」と、国民民主党の玉木雄一郎代表が主張しているということです。

流れをみていくと、11月13日、玉木代表は民放番組にて「『税収が減るから』と総務省が全国知事会等に根回しをしている」と発言しました。

これに対し14日、全国知事会の会長でもある宮城県の村井知事は「総務省か総務大臣から私にアプローチがあったという事はない」と否定しています。

また、“根回し”があったと指摘された村上誠一郎総務大臣も15日、「依頼していない。玉木代表の発言は残念ながら理解できない」としました。

そして、“根回し”はないという反論を受けた国民民主党の榛葉賀津也幹事長は同じく15日、「大臣から全国知事会に連絡を入れていると複数筋から確認できた」と発言。このように、情報が錯綜している状態です。

井上キャスター:
これまでの自公政権で強かったときは、こういった話が表に出ず、自公だけで話が進んでいった面があります。しかし、こういった野党との協議もしなければならなくなり、さまざまなことがオープンに出てきたという意味では、前向きに捉えてもいいように思いました。

前鳥取県知事 片山善博氏:
議論が活発になりますし、議論の前提となるいろいろなデータも出てこざるを得ないですよね。表で議論をすることが、今までよりは増えるのではないでしょうか。

“根回し”については、私もかつての経験で、何らかの働きかけはあったと思います。ただ今回の場合、「税収が減ります」というのは、“根回し”ではなく注意喚起なんですよね。

「自治体の皆さん、ぼやぼやしていると思わぬところで大幅に減少になりますよ」というような注意喚起は、当然したと思います。

ホランキャスター:
ふるさと納税などで潤沢に資金がある自治体は、それを充てることもできると思いますが、どのような自治体が税収減によって困りやすい傾向にあるのでしょうか。

前鳥取県知事 片山善博氏:
一般的には大都市です。たとえば神奈川県なら横浜、川崎、相模原といった政令指定都市へのダメージが大きいでしょう。政令指定都市は住民税の割合が高いので、横浜や、特に川崎は大変だと思います。

もう代替財源もないので、どこを減らしますかというと、私が恐れるのは、たとえば学校の正規の教員を非正規に置き換えてしまうことです。これは今でも財政難のところはやっていますが、そういうことがこれから進行するのではないかと、私はすごく懸念しています。

元競泳日本代表 松田丈志さん:
県の税収がどれぐらい減るかという試算がありましたが、県の人口の規模感などとは、あまり比例していないように見えました。

前鳥取県知事 片山善博氏:
いえ、かなり比例はしていると思います。個人住民税なので、だいたい人口に比例しますし、あとは高額所得者が多い地域とそうでない地域とで差があります。

鳥取ぐらいの小さな県でも、150億円ぐらいの減収になります。鳥取県は税収入が600億円ないため、それで150億円減るというのはものすごいダメージです。

井上キャスター:
政府は、自分たちが進めたい政策については兆円規模でどーんと予算をつける一方で、こういう7兆円の減収ということになると、ブレーキを踏みたがるように見えてしまいます。納得できないモヤモヤ感があるのですが…

前鳥取県知事 片山善博氏:
今までの岸田内閣のときも何兆円と予算をつけることはありましたが、だいたい単年度で終わります。

しかし今回、103万の壁を国民民主党の言うとおりに変えると、恒久的に未来永劫続きます。これは政府としても、やはり二の足を踏まざるを得ません。

ホランキャスター:
確かに、頻繁に見直すものではないですものね。

井上キャスター:
今週中にも何か結論が出る、というところにはなってきました。

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<プロフィール>
片山善博氏
前鳥取県知事
大正大学 地域構想研究所所長
2010年9月から翌年まで総務大臣を務める

松田丈志さん
元競泳日本代表
五輪4大会出場 4個のメダル獲得
JOC理事 宮崎県出身 3児の父