破産を申し立てたのは『創業家の1人』
まだ不明点も多い“異例づくし”の破産劇。通常とは大きく違うところがあるようです。まず、会社が倒産状態になった場合、事業を続けるのか終わらせるのか、この2択を迫られます。東京商工リサーチによりますと、船井電機ほどの規模の会社なら事業を続ける選択をするのが通常だということです。
事業を続ける場合は、民事再生(再生計画を提示・再生後に負債返済)か会社更生(役員総入れ替えで再出発)という方法があります。しかし今回は事業を終わらせる破産手続きへと舵を切りました。
さらに異例な点は、この破産手続きは全会一致で行われたものではないということ。船井電機の取締役の1人が「準自己破産」を申し立てたのです。この人物は後から入ってきた役員ではなく、創業家の1人です。
西村雄大弁護士によりますと、準自己破産とは、取締役などが個人で申し立てる破産手続きのことです。破産の申し立てをしたいが取締役会の同意が取れないなどの場合に、破産手続きを開始して法人格を消滅させる手続きです。
なぜそのようなことをする必要があったのか?これについて東京商工リサーチは、外部経営者と創業家一族との対立があったのではないかと見ています。素性の知れない役員たちにこれ以上、船井電機の資産を使われたくなかったのではないかということです。
その資産について、船井電機をめぐっては、実は多額のお金が消えています。MBSが入手した破産手続開始申立書によりますと、債務超過(返せないお金)は117億6900万円、流出したとみられる資金は約300億円です。この約300億円は大手脱毛サロン会社の買収・資金支援や、関連会社への貸付金などで消えていったということです。買収される前の預金は347億円ありましたが、破産申し立て時は“ほぼなし”ということに。