“野﨑さんが「あれは使い物にならん、ニセモノや」”

密売人と別れた後は…。

被告 「封筒の中からティッシュのかたまりを出して見たら、ビニール袋に透明な結晶があるのを見て、おーっと思ってすぐに戻しました」
弁護人「封筒はその後どうした?」
被告 「社長は寝ていたので、(4月8日の)夕方ぐらいに渡しました」
弁護人「野﨑さんは何と?」
被告 「『ありがとうございます』と言っていました」
弁護人「その後、野﨑さんに変化は?」
被告 「なかったです。翌日(4月9日)の夕食の時に、『あれは使い物にならん、ニセモノや』『お前にはもう頼まん』と言われました」

つまり須藤被告としては、「覚醒剤の密売人と接触し、“白い結晶状のもの”を購入した点は認めるが、それが本物の覚醒剤だったかは疑わしい」という主張である。

確かに、10月1日に証人出廷した密売人=被告に直接封筒を手渡した男性は「覚醒剤は本物だった」と証言した一方、11月7日に証人出廷した密売人=被告と電話でやり取りをした男性は、「実際は氷砂糖だった」と法廷で証言した。後者とは符合することにはなる…。

被告曰く、その後は野﨑さんと覚醒剤についてやり取りすることはなかったという。約1週間後の4月13日にも「覚醒剤 死亡」「殺す」という検索履歴、野﨑さん死亡後の6月3日にも「覚醒剤 入手ルート」「覚醒剤 検挙率」という検索履歴が、それぞれ確認されているが、被告は前述と同様に、“検索欄に候補として出てきたものをクリックしただけ”と説明した。

法廷で繰り広げられた、表面上は矛盾のない説明。被告は真実を語っているのか、それとも稀代の “ストーリーテラー” なのか…。被告人質問の焦点は、野﨑さんが亡くなった当日へと移っていく。(後編に続く)

(MBS報道センター 松本陸・大里奈々)