四宮 ちょっとプライバシーとは離れますけど、誹謗中傷ということでいうと、コロナの時期も含めてですが、著名な方々が、心を病んで自死を選ぶ…ということもありましたから、そこを規制しようと思っても なかなか難しいところではあるんですが、それぞれの方々の「節度を守ってもらう事」を期待する以外に 正直なかなかないんですよね…
四宮 一つ一つ、そういう投稿を、訴えを起こして潰していく…みたいなことをしても、もう、次から次に出てきますから。だから国なのか 全体的に制度作り、それから法律かどうかはわかりませんけれども、業界団体との話し合い…ということによって「一定のルール」を作っていくべきだとは思います。
四宮 結構売れているタレントさんや俳優さんから、そういう制度作りができないのか…という相談を受けたことも何度かあります。
池田 テレビ番組に出演していた方が亡くなったことを受けて、「侮辱罪」については ある程度、厳罰化されたが 「プライバシー権」というのは、もう何も基本的には変わってない?
四宮 そうですね…プライバシー侵害で「刑事罰」ということはないので、ただプライバシー権の侵害に当たる場合には、大体は何か(別のもの)とセットだったりする。侮辱的な表現であったり、名誉毀損的な表現も加わっていることの方が多かったりもするので、そういった、今ある制度の中で、取り締まっていくっていうことはできると思いますね。
池田 これまでの話をずっと伺っていると、それで裁判で訴えて勝つことを(第一に)望んでるわけではないわけですよね?
四宮 そうですね。訴えを起こすのも、なかなか勇気のいることですし、(芸能人が)自分の裁判を起こすにも、自分の本名で、自分の名前で裁判を起こさなければいけないし、(SNSなどの)投稿を削除する、「削除要請」をするときにも、本人確認が求められるので、弁護士とか、芸能事務所が代理をしてそれを行う事が なかなか難しい。
四宮 「本当にあなたは、その方の代理人なんですか? その方の本人確認をさせてください」ということになるので、非常に…そこまでやらなきゃいけない事態になる前に 止めてほしい。というのが切実な想いだとは思います。
四宮さんは創作活動をする際の「プライバシー侵害」の線引きの難しさについても言及しました。
四宮 これがプライバシー侵害に当たるのかどうか… ということを考えながらやると、確かに表現に躊躇、ためらいが生じ、萎縮が生じることはあるかもしれないですけれども、そこは我々弁護士も 一つ頑張らなきゃいけない所で、ここまでは表現として許される。ここからは許されない… ということをクリエイターが気軽に相談できる弁護士がまだ多分少ないです。なので、そういう法律の専門家が増えてくるということも重要なのかなと…
四宮 数は少ないですね、欧米に比べると…エンタテーメントロイヤーって 何となく歌って踊る弁護士なのか? みたいなぐらいにしか思われてないと思うので…
四宮 エンターテイメントビジネスに弁護士が必要で、そのクリエイティブな活動にも弁護士が必要でっていうのは ようやく最近になって認識はされてきたけれども、まだ遅れているかなとは思います。
池田 プライバシーの話に戻って恐縮ですが、どうやったら このなかなか変わらないものを変えていけると思いますか?
四宮 1つは昨今のようにプライバシー侵害を受けた人が 声をあげる。声をあげることに対して、ためらいが生じないように…セーフティネットじゃないけれども、専門家も含めて、守ってあげる。そういう環境を作っていくことが大事かなとは思います。
四宮 ハラスメントの問題とかも含めてですけども、被害を受けた人が なかなか声を出しづらい世の中だったと思うんですけれども、いろんな専門家が、メンタルケアも含めて、きちっと守ってあげる体制を作って、被害を発信することが大事です。
四宮 ただ…その被害が、どれだけの被害だったのか 本当にどういう被害があったのか っていうことは、なかなか証明は難しいところがあるので、ある一定の段階では「第三者」が間に入って調整をする。調停とか仲裁制度がありますが、それがもう少し使いやすい制度になると良いかなと。
四宮 おそらく… 調停とか仲裁って聞いても、一般の人はピンとこないと思うんです。どこでそれがなされてるかとか、あんまり知らないと思って 「裁判」しか知らないと思うんですよ。
四宮 裁判の手前に、まだそういう第三者が入って、間を取り持ってくれる制度があるっていうことを「知ってもらうこと」も重要かなと思います。それでも埒が明かなければ もちろん裁判なんですけど、裁判というものに対してあんまりネガティブな印象を持たないように…アメリカはもう何があっても裁判しますからね。日本はまだそうではない。
四宮 やはり裁判ってのは よほどのことがない限りしない。私が相談を受ける芸能人の方なんかでも、「裁判まではしたくないんですよね」っていう相談のされ方は かなり多いので…。
四宮 でも裁判は決してそんな悪いものではないので、むしろ裁判官がいて、第三者的に きちっと判断して、間を取り持ってくれる制度が 行政サービスでもありますから、使った方がいいかなとは思いますね…
池田 我慢せずに声を出してと?
四宮 そうですね。弁護士があんまりこういうこと言うと、「裁判やって儲けたいからだろ」と思われちゃうと あまりアレですけど。でも弁護士も自分たちで考えなければならない。
四宮 弁護士という存在の敷居が高ければ、裁判の敷居が高くなるので、弁護士がもう少し身近になってくるというのも重要なことかなと。
【担当:芸能情報ステーション】














