女性達の駆け込み寺 “中絶クリニック”前で反対派が説得活動

イリノイ州南部の街・カーボンデール。州境に近い場所に、近隣の州に住む女性達の駆け込み寺となっている人工妊娠中絶専門のクリニックがある。

村瀬キャスター
「クリニックの前の道路で2人が座り込みをしています。中絶に対する反対活動をしている人だと思います」

胸の小型カメラでクリニックに入る患者の写真を撮影し、人種や車のナンバーなどを記録していた。車を停めた患者に対し、中絶を思いとどまるよう説得するという。

――なぜ中絶に反対ですか?
スコット・デイヴィスさん(69)
「中絶は安全だとはいえない行為です。私たちは助けるためにここにいます。中絶は“殺人”です。神は『汝殺すなかれ』と言っています」

――気を変えさせるために、人形を患者に見せる?
「はい、そうです。どんな危険なことをしようとしているのか、わかってもらうためです」

――レイプの場合も中絶すべきではない?
「強制的に中絶した女性の自殺率は6倍にもなります。精神が壊れるのです。強姦の罪を子どもにだけ科し、処罰していることになるのです」

取材をしていると、クリニックの院長が現れ、道路の向かい側に立った。

アンドレア・ガイェゴス院長(42)
「ここに立って、患者が中に入りやすいようにしています。患者の多くはナンバープレートなどが記録されているのに気づき動揺します。養子の情報を見せられ、怒る人もいます」

――道路のあちらとこちらで分断されている?意見も異なっている?
「そうですね。正しいです」

院長と反対派との間で、口論が始まった。

反対派「あなたは、苦境に陥っている女性から稼いでいるでしょ?」
院長「あなたも同じじゃない?」
反対派「困っている人からはもらってないわ」
院長「あなたも誰かの選択肢を奪うことで稼いでいるわ」

抗議活動は、ほぼ毎日行われているという。

厳重なセキュリティが敷かれているクリニック内部の撮影が許された。

アメリカでは1973年から中絶が憲法上の権利として認められていた。しかし、トランプ政権下で保守派の判事が相次いで最高裁に送り込まれた結果、2年前にそれが覆された。

ケンタッキー州やテネシー州など周辺の州で中絶が禁止されたため、女性達が州境を越えてやってくるのだという。

アンドレア院長
「土曜日はいつも忙しいです。州外から移動しやすく、子どもを預けたり仕事を休みやすいからです」

――たくさんの患者を受け入れている?
「1か月に400~500人の患者を診ることは珍しくありません。かなり多いですよね。その90%以上を他の州からの患者が占めていて、イリノイ州の患者はそれほど多くありません」

中絶は手術を選択した場合も、薬を服用した場合も、日本円で9万円ほど。