社会人野球は『日ごろのサポートへの感謝を表現できる重要な場』
社会人野球は、職場の同僚や仕事仲間、会社のサポートを受けながら、野球に集中できる環境をつくってもらっている。全国の舞台は、そんな人たちに日ごろのサポートへの感謝を表現できる重要な場。だからこそ、7月に行われる都市対抗と、この10月の日本選手権は絶対に出場権を手にしないといけない。ベテランであればあるほど、この予選を勝ち抜く大切さは、身にしみてわかっている。その思いが、再び執念の同点劇を呼び込んだ。
この場面で28歳の4番・酒井良樹選手が5球目をタイムリー2ベースヒット。3対2と1点差に迫ると、5番・藤井健平選手が初球をセンターオーバーのタイムリー2ベース。思わずNTT西日本のベンチから選手全員が飛び出すほどの起死回生の一打で3対3。試合は同点のまま、ついに12回にもつれ込んだ。
12回表、今度は三菱重工Westが勝利への執念を見せる。ノーアウト満塁から犠牲フライで勝ち越すと、なおも続く1アウト2・3塁のチャンスで、阪神タイガースを戦力外になった後、30歳でチームに加入し新たなスタートをきった北條選手がセンター前へのタイムリーヒット。さらに1点を加えて6対3。ノーアウト1・2塁から始まるタイブレークでも余裕をもって守りにつける3点差をつけて、これで勝負は決まったかに思われた。
しかし、酷暑のコンディションの中、予定のインニングをはるかに超える激闘は、エースを確実に追い込んでいた。水分が不足して、踏み込んだ足の踏ん張りがきかない。球速を落としてコントロールを重視。なんとか先頭打者は抑えたものの、次のバッターにはフォアボール。1アウト満塁とチャンスを広げられた。それでも、あと2つアウトを取れば試合終了。竹田投手は力を振り絞って投球を続ける。バッターボックスの吉川育真選手も粘りに粘った。そして8球目、低めへのストレート。打たれた瞬間、センター方向を見て打球の行方を見守る竹田投手。本来の球威が残っていれば打ち取ったはずの角度に上がった打球。しかし、打球はぐんぐん伸びて、センターの頭上を越えるタイムリー2ベースとなって6対5。なおも1アウト2・3塁とさらなる緊迫した場面が訪れた。
とはいえまだ1点リード。この場面で、ベンチに一旦戻って水分を補給。気持ちと体を整える竹田投手。続くバッターを歩かせて満塁策で逃げ切りを図った。迎えるバッターは2番・串畑勇誠選手。一球一球、球場がどよめく中、カウント3ボール2ストライクからの打球は、大きく弾んだピッチャーゴロ。捕球して素早くホームへの送球を試みる竹田投手。しかし、ここでも踏み込んだ足の踏ん張りがきかず、キャッチャーの頭を超えるまさかの悪送球。思わずマウンド上に座り込む竹田投手。この間にセカンドランナーがホームに生還して7対6。NTT西日本が劇的幕切れで日本選手権への出場権を手にした。














