米大統領選まであと10日 市場はトランプ優勢?

大統領選まであと10日。選挙の結果は今後の世界経済にどのような影響を及ぼすのか。

――市場関係者の間ではトランプ優勢という考えか?

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
はい。その確信を強めた投資家がポジションを取り始めたのが、この1ヶ月ぐらいの動きだと思う。

大統領選挙の状況。リアル・クリア・ポリティクスの全国世論調査の平均値は、一時ハリス氏優勢だというふうに伝えられてきたが、ここにきて、10月25日時点で、差はついに0.1ポイントになってしまった。ハリス氏が上にいるとはいっても、実はトランプ支持は世論調査では実際の投票より低く出るという傾向が過去2回の選挙では顕著。例えばヒラリー・クリントン氏は、今の時期と同じ、投票10日前ぐらいに5ポイントもリードしたが、負けた。2020年のときにはバイデン氏が8ポイントリードしていたが、ギリギリで勝った。数パーセント、割り引いて見なくてはいけないという説がある。

さらに勝敗の行方を左右する激戦州を見ると、7つの激戦州すべてで、トランプ氏が優勢。

7州の平均でも優勢。元々は3ベルトといわれる4州(ネバダ・アリゾナ・ジョージア・ノースカロライナ)を全部落としても、ブルーウォールと言われる上の3州(ウィスコンシン・ミシガン・ペンシルベニア)を取れば、ハリス氏は勝てる計算だったが、この3州もすべてトランプ氏が優勢になっている。

――こうした中で長期金利が上昇してるというグラフが出てきて、4%台にまた戻っている。これは「アメリカの景気が堅調」ということに、このトランプ優勢が伝えられているからか。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
トランプの政策は景気をGDP比で1%ぐらい押し上げることになると思います。そうすると景気がいいし、物価も上がる可能性があるということからこういう動きになっている。

ドル円もドル高が進んでいて、一時153円台までいった、10月26日現在も152円台。7月に日銀が追加利上げしたときの水準になっている。

トランプ大統領が誕生したら、何が起きるのか。政策を整理してみる。

――大きいのは減税か。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
経済を持ち上げるという意味では一番大きいと思う。いろいろあるが、議会との組み合わせで、どこまで実現できるかはまだ確定はできない。やはりトランプ大統領がここまで優勢になってきたら“ある程度”は実現するだろう。その“ある程度”がGDP比1%ぐらい財政で景気を押し上げるという期待感が高まっている。

――規制緩和にも期待が高い?

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
財界は、むしろこちらの期待が高い。テスラのイーロン・マスクが委員長になって、政府機関(政府効率化委員会)というのを作った。規制緩和のトップで陣頭指揮をする。イーロン・マスクはいろんなビジネスをやっている。掘削会社が高速の地下鉄道を作る。EV専用のトンネルを作る、あるいは衛星通信などたくさんやっている。そこのトップに規制緩和を強力に進めることから、財界としては大変期待が高まっている。

――「規制緩和を進めてくれ」という経済人が、規制緩和を決める、政府のトップになるというのは日本では考えられない。さらに「1つ規制を作ると10の規制を廃止する」いうのを原則にすると言っている。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
もともと「1つ作ったら、2つ廃止する」というのがアメリカのルール。それをバイデンが廃止した。なので、もう1回返り咲いたら、もっと強力にやるというわけだ。

――石油・天然ガスをどんどん掘るともいっている。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
これは庶民のインフレに対する不満が非常に強いので、エネルギーコストを下げるという政策。

――関税政策で「中国製品は60%関税を追加に課す」や、日本を含め、他国のものにも追加関税を課すというが、心配だ。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
国際機関は、これが世界経済を押し下げるということで警告を出している。トランプ氏は中国に対しては実際にやるかもしれないが、他の国はいろんな交渉のための材料であって、ここまで過激なことをやると見る必要はないと思う。

――日本車に関税20%を掛けられたら、大変なことになる。

千葉商科大学教授 磯山友幸氏:
相当影響が大きいと思う。中国に対する関税の問題でも、世界経済がガクンともう一段冷え込むきっかけになる可能性がある。

――250兆円規模の政府出資ファンド創設するという。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
これは関税収入を原資にして、「ソブリンベースファンド」国の意思を表すファンドをつくる。それによってアメリカ国内、それから世界中に投資をする。元々、アメリカは産業政策には後ろ向きだったが、最近半導体など非常に前向きになってきて、もっと推し進めるという国家の意思を示すということだ。

――新しい産業政策の財布を作るようなものか。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
そうですね、はい。

――こういう政策の中で、インフレ加速させるような感じになるわけだが、とりわけ注目されてるセクターとしてはどのようなものがあるのか。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
まずインフレよりも先に今、少し政策金利が高すぎて、景気の減速を和らげるという意味で景気を押し上げる方が期待感は高い。さらにセクターでいうと、エネルギーコストを下げることから「エネルギーセクター」。それから「ロシア・ウクライナ戦争はすぐやめさせる」ということで「ウクライナの復興需要」。建機などはもう株価が上がっている。それから「規制緩和で金融」「防衛力強化で防衛」。さらに食品はハリス氏が「生活コストを下げるために食品価格の値上げを認めない」という政策を打ち出していたが、それをやめさせる。

――一方で再生可能エネルギーは下落。住宅も下落。

りそなアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 黒瀬浩一氏:
パリ協定からもう1回再離脱する可能性が高いと思う。かつ住宅は、ハリス氏は初めて買う人に「頭金2万5000ドル補助金を出す」と言っていたが、これは無理ということで少し期待感が逸れている。