特集は復興の現在地です。東日本大震災の発生から11年半が経ちましたが、当時の子どもたちの中には葛藤を抱えながらも、震災伝承や故郷の再生のために取り組み始めた人がいます。津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市の大川地区出身の若者たちの新たな挑戦を取材しました。

■「奇跡の少年」の葛藤

児童、教職員84人が犠牲となった石巻市の震災遺構・大川小学校です。


8月、お盆の時期に合わせ、手作りの紙灯ろうに明かりを灯す催し「おかえりプロジェクト」が初めて開かれました。企画したのは、大川小出身の若者たちが中心となって作った団体「Team(チーム)大川未来を拓くネットワーク」です。


Team大川未来を拓くネットワーク代表 只野哲也さん(23):
「若者がいっぱい来るかというと、今回はまだ1回目なのでそれなりかなと思いますけど、徐々に2回3回と続けているうちに若者が増えたらいいなと思います」


代表の只野哲也さんは、期待と不安を口にします。

震災発生当時の只野哲也さん(当時11歳):
「友達がバッと波にのまれていって」


震災当時、大川小の5年生だった只野さん。津波にのまれながら奇跡的に助かりましたが、家族や多くの友人を失いました。あの日の真実をメディアの前で発信し続け、大川出身の仲間たちと被災した校舎を残すための活動もしてきました。しかし・・・


只野哲也さん:
「すごく嫌な言い方をすれば、やらされているような感覚で取材に応じてきて、仲間や亡くなった同級生、友達にも失礼だと」


「奇跡の少年」と呼ばれた只野さんは、一時、メディアや大川地区と距離を置きました。