入手方法によっては、使えません

「転売ヤー」を、俗語として掲載する国語辞典(三省堂国語辞典・第八版)があります。「転売ヤー」を目にしたり、耳にしたりする機会は多く、売り買いの世界で定着してきた言葉だからこそ、国語辞典に掲載されたのでしょう。

さて、その「転売」に戸惑うことがありました。「転売目的で盗んだ」といった表現が、ときどき報道記事で使われるのです。

審査部で扱う主要14冊の国語辞典で「転売」を調べると、すべてに「買ったものを、ほかに売り渡す」という意味が掲載されています。「転売」は「買ったもの」が対象なので、「盗んだもの」には使えません。

上記の国語辞典(三省堂国語辞典・第八版)には「買ったりしたもの」と、「たり」をつけて掲載しているので「買ったもの」以外も対象に含むと解釈することはできます。ただ、この「たり」には「譲り受けたもの(無償で得たもの)」くらいの許容範囲はあるかも知れませんが、「盗んだもの(不法に得たもの)」まで含むとは思えません。

では、なぜ「転売目的で盗んだ」といった表現が使われるのでしょう。話を聞くと、窃盗事件に関する警察発表で「転売目的で盗んだ」といった表現があり、発表内容を正確に引用する必要から報道記事にでてくるのだそうです。

警察の調べに対して容疑者がその旨の供述をしているのであれば、「転売目的で盗んだ」になるでしょう。このため、正確に引用しなくてはいけない場合、「転売目的で盗んだ」といった表現は許容範囲としています。

この「転売目的で盗んだ」も、多く目にし、耳にしていくうちに馴染んでしまうのかも知れません。しかし、転売目的で「盗む」のは犯罪です。これは馴染むわけにいきません。