インタビュー後記…日本のコンテンツ業界が持ちはじめた高いところを目指す意志

少し前まで、日本のコンテンツビジネスはアニメの分野で世界へ羽ばたいても、実写は当面無理なのだろうと私は考えていた。ところが『ゴジラ-1.0』がアメリカでもヒットしてアカデミー賞視覚効果賞を受賞した。

同じタイミングで「地面師たち」「極悪女王」が登場したのを見て、実写もいけると確信を持った。この2作を髙橋氏がプロデュースした意義は大きいと感じる。クリエイターとがっぷり四つで組んで、中身を高めるタイプのプロデューサーだからだ。

挑戦できる環境を得た髙橋氏が、クリエイターたちとともに「基準をどんどん上げていく」ことで、日本の実写コンテンツの可能性は無限に広がる。

大谷翔平はWBCで「憧れるのをやめましょう」とチームを鼓舞した。同じように、高いところを目指す意志を、日本のコンテンツ業界が持ちはじめている。

髙橋氏がNetflixにいる立場で、クリエイターたちとそんな志を共有することが、今必要なのだと思う。今後のNetflix作品への期待がいっそうふくらんだ。

髙橋 信一(たかはし・しんいち)氏の略歴
Netflix コンテンツ部門 ディレクター
2020年入社
Netflixの東京オフィスを拠点に、日本発の実写全般での制作及び編成を担当
これまでの担当作品に『浅草キッド』や『シティーハンター』などのNetflix映画、「地面師たち」「極悪女王」などのシリーズや「トークサバイバー」などのバラエティ作品のプロデュースも担当

〈聞き手の略歴〉
境 治(さかい・おさむ) メディアコンサルタント/コピーライター
1962年 福岡市生まれ
1987年 東京大学を卒業、広告会社I&Sに入社しコピーライターに
1993年 フリーランスとして活動
その後、映像制作会社などに勤務したのち2013年から再びフリーランス
現在は、テレビとネットの横断業界誌MediaBorder2.0をnoteで運営
また、勉強会「ミライテレビ推進会議」を主催

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。