復調の兆しを見せる小笠原朱里と、練習が継続できるようになった森田歩実
昨年移籍加入した小笠原も、5000mで17年の日本選手権3位という実績の持ち主。そのとき記録した15分23秒56(高校歴代2位)は、実業団駅伝でも区間賞候補といえるレベルだ。
しかしその後は故障に悩まされ、良くなりかける時期と悪い時期を繰り返している。20年には10000mで32分10秒69、ハーフマラソンで1時間10分25秒と自己新で走ったが、5000mのシーズンベストは21~23年と下降線を描いた。
「今は痛みなく走れていますよ」と、石川県の先輩でもある中村監督(05年日本選手権5000m2位)。「パーソナルトレーナーをつけて動きや、体の使い方を考えてトレーニングをしています」。9月の日体大長距離競技会5000mでは16分04秒26と、この4シーズンで最高タイムをマーク。復調の兆しが表れてきた。
森田歩実(28)も9月の日体大5000mで15分55秒76の自己新をマーク。「単独走で出した記録なので、もっと行けると思います」と中村監督。「スタミナのある選手で、今年の東京マラソンでは2時間31分38秒で走りました。マラソン練習は上杉と一緒にやっています」。起用区間は「森田は向かい風も強い」(中村監督)ことから5区が有力か。1、3区を上杉と小笠原が分担することになりそうだ。
チームを盛り上げるキャプテン村上愛華
クイーンズ駅伝出場権は16位以内。そこに絶対に入る確証はない。ボーダーラインでレースを進める可能性もある。中村監督は以下のようにレースを展望する。
「予測は難しいのですが、1区は8位以内でつなげると思います。最短区間の2区(3.6km)を上手くつなげば、3区も順位をキープできる。インターナショナル区間の4区(3.8km)を(日本選手で)耐えれば、5区は順位を上げられるかもしれません。そこで勝負(16位以内)をつけられる」
プリンセス駅伝は主要3区間が、レースの流れを作ったり変えたりすることが多い。だが接戦になったり、予想以上の走りをする選手が現れたりすれば、それ以外の区間が勝敗に影響することもある。
主要3選手以外では佐藤が、5000m自己記録で15分36秒28とレベルが高い。クイーンズ駅伝でも21年大会で1区区間7位の実績を持つ。上杉、中村監督らとともに移籍してきたが、東京メトロ加入後はコーチ兼任ということもあり、昨年まで4シーズン続けてきた15分台を出せていない。だが9月の全日本実業団陸上5000mで16分35秒49と、移籍後の自己最高をマーク。15分台はないが記録は安定して出している。主要区間以外なら堅実な走りが期待できる。
そしてキャプテンの村上愛華(26)がキーパーソンになる。眞田木葉(21)とともに社歴は最も長い。
「入社したときから駅伝で、全国大会(クイーンズ駅伝)に出たいと頑張ってきた選手です。周りに気配りをして、チームの雰囲気作りを考えてくれている。駅伝に懸ける思いが強く、そういう選手が走ればチームに勢いが付きます」
中村監督は今年4月1日に就任したが、冬期練習の内容は把握していた。「当初は僕も練習を欲張りすぎて、ケガや体調不良を繰り返す選手もいました。夏からはしっかり練習を継続することも意識して、選手個々に合わせて練習し、積み上げることができたと思います。僕が言うのも何ですが、しっかり練習して、競技に打ち込めている。選手それぞれが成長しているのがわかりますよ。普通に力を出せば8位以内に自ずと入るでしょう」初出場を目指す東京メトロは、ボーダーラインのはるか前を走るつもりでプリンセス駅伝に挑む。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)