鈴木啓之さん(東京大学・特任准教授)

荻上:
なるほど、攻撃の手段や範囲というのも拡大していますよね。例えばレバノンではヒズボラ関係者や民間人に対する攻撃も続いています。こうした手段の拡張についてどうお考えですか?

鈴木さん:
ヒズボラに対する通信機器を使った攻撃にはとても驚かされました。ヒズボラが購入して構成員に配布した通信機器に、イスラエルによって事前に爆発物が仕込まれていたとのことです。また、ヒズボラの指導者ナスララ書記長の殺害もありました。過去に例のない規模、性質の攻撃だったと思います。

荻上:
イスラエル軍は民間人を巻き込まないように限定的に攻撃していると説明していますが、この説明と実態の乖離についてはどう思われますか?

鈴木さん:
イスラエルはガザ地区でのでの戦闘でも、民間人の犠牲者を最小限にしているとの立場です。しかし、実際には民間人の犠牲者が多く出ていることを、私たちはすでに知っています。レバノンでも、やはり市民の犠牲が出ており、インフラも壊されています。このる現実を直視すべきです。

南部:
リスナーからメールが届いています。「ガザ侵攻から1年、パレスチナの命の犠牲と戦争の拡大が胸を痛めます。国連や国際司法裁判所は何のためにあるのでしょうか?」

荻上:
このメールについて鈴木さんのご意見は?

鈴木さん:
国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)から、この1年にいくつか重要な判断が示されています。特に今年7月には、イスラエルの占領政策は国際法に違反しているとの勧告的意見がICJから出されました。こうした司法判断に準拠して国際社会全体がこの問題に対してどれほど行動を起こせるかが課題です。