倫理問題までが浮上
この問題は、研究に関与した女子学生らが自らの卵子を提供していた事実が判明したことでさらに複雑化します。研究自体の不正に倫理的な問題までが加わった格好です。研究過程全体が不正だけでなく不適切だったのです。
数々の証拠により「サイエンス」誌で発表された論文のES細胞は、ほぼ完全な捏造であることが確定し、同誌に発表されたES細胞に関する2つの論文は、2006年1月にすべて撤回されました。
黄教授はソウル大学を解雇され、国内外での彼の名声は失墜しました。また韓国の検察は黄教授を研究費流用や生命倫理法違反などの罪で起訴し、懲役1年6か月、執行猶予2年の刑が確定しました。
研究倫理の重要性が浮上
この事件は、科学研究における倫理の重要性や、検証の必要性を改めて浮き彫りにしたといえます。
ただ「ES細胞の研究」自体が悪かったわけではありません。
また再生医療に向けての研究はこれ以後も進みました。その最も重要な成果のひとつが、山中伸弥教授によるiPS細胞研究であるというのは、誰もがご存じの通りです(2012年ノーベル生理学・医学賞受賞)。
しかし、その一方で、日本でも「STAP細胞」の不正問題などもあり、研究には今後も高い倫理観が必要なのは言うまでもありません。














