石破新政権 波乱の幕開け 市場を惑わす総理の発言

石破総理の発言に大きく翻弄された市場。番組の市場予想でおなじみの黒瀬浩一氏は総理就任後の発言の“ぶれ”についてこう語る。

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
株価の急落、それから一気に円高を振れたのを見て(発言を)直したというのはブレたというより完全に修正したという理解でいいのかなと思う。石破ショックを払拭するために、金融引き締めに「積極的」から、どちらかというと「消極的」(に変わった)。財政再建についても、法人税増税と金融所得増税について、経済あっての財政という形で後退させている。
金融と財政を大きく後退させたと思う。この2つが石破ショックを払拭するという意味では非常に役立った。

石破新政権 波乱の幕開け 実現可能?「最低賃金1500円」

石破総理が経済政策として掲げるのが、「物価を上回る賃上げの実現」。

石破茂 総理:
適切な価格転嫁・生産性向上支援により、最低賃金を着実に引き上げ、2020年代の全国平均1500円という高い目標に向かって、たゆまぬ努力を続ける。

この目標を達成するには、毎年89円を5年連続で引き上げることになる。岸田政権では「2030年代半ばまで」としていた目標を「2020年代」と、5年程度前倒しにした格好だ。

東京墨田区にある創業58年の居酒屋「三祐酒場 八広店」。焼酎ハイボール目当ての客で常時満席に近い人気店だ。同店では8人のアルバイトを雇っている。店主・奥野木晋助さんは賃金に関して「実際1200円にはもう一昨年から変更している。最低賃金で雇おうと思っても人がなかなか集まらない。これが現実だと思う」という。東京都の最低賃金は10月から50円引き上げられ、「1163円」だが、この店では人材確保のため、既に一昨年から1200円にしている。奥野木さんは「最低賃金1500円が本当になるとしたら、うちでも最低でも1700円とか1800円、下手すると2000円払わないと人が集まらないという状況になってしまう」。時給が1500円を超えると更なる価格転嫁は避けられないという。

「『にこみ』一杯、税込550円で提供しているが、最低時給1500円となると、税込にすると770円。例えばもう何消費税が上がるとなると下手すると『にこみ』一杯800円で売らないと間に合わない」。現在の客単価は4000円ほど。奥野木さんは値上げすれば6000円になると試算する。
週1~2回来店する常連客は「洋服1着買うのをやめて、ここに来る人もいれば、食べるものを我慢して洋服に使う人もいる。このメンバーはみんなここに来る」。

番組コメンテーターの矢嶋氏は「最低賃金」についてこう語る。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
人手不足を確保する企業にしてみると今回石破総理が掲げた最低賃金の引き上げのペースはそれほど非現実的ではない。例えば生産性を上げて、最低賃金を上回るような生産性で何とかクリアしていく。できる企業は、より業務を拡大する。できない企業はできる企業に人や会社をM&Aの形も含めて吸収されていくという流れがその裏では起こる。綺麗ごとでみんなが良くなるみたいな話ではなく、選択と集中が起こるような制度設計をどうするか併せてやらないと、今回の最低賃金の引き上げは現実的には難しいと思う。

石破内閣の支持率は、岸田内閣発足時を下回る50.7%。矢島氏は支持率向上の鍵は物価高対策にあると指摘する。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
インフレの問題が解決しないと、国民の支持率は上がらなくて短命政権に終わってしまう。今言っている「いろいろやりたいこと」がほとんど何もできない政権になってしまう。