政党によるインフルエンサーの囲い込みも

政治分野でのインフルエンサーの影響力が拡大していく中、政党側も手をこまねいているわけではない。8月にイリノイ州シカゴで開かれた民主党の全国大会。現地取材の中で、強く印象に残ったのは、露骨ともいえるインフルエンサー対策だった。

民主党は今回、初めて会場でのインフルエンサーによる生配信を許可し、全米からおよそ200人を招待していた。

ハリス氏やオバマ元大統領らが演説したステージに近い特等席にはインフルエンサー専用のブースが設置されたほか、会場内には撮影や映像編集を行えるスペースが複数設けられていて、食べ物や飲み物も提供されるなど、充実した環境が用意されていた。政治家へのインタビューや共同での動画制作の機会も積極的に民主党がインフルエンサー側に提案する姿がそこにはあった。

民主党のデジタル戦略の担当者は「クリエイターを招待することは私たちのメッセージを届けることに繋がる」「歴史的な大会になるからこそ、彼らに最前列の席を用意した」と説明する。

ライバルの共和党もSNSを重視する姿勢は同様だ。7月にウィスコンシン州ミルウォーキーで開いた全国大会にはおよそ100人のインフルエンサーを招き、生配信などを通じた若年層へのアピールに注力していた。

大統領選挙は接戦が予想されており、従来のメディア戦略では届かない層にいかにメッセージを届け、支持を掘り起こすかが大きなカギになる。効果的な発信に苦心する両党がインフルエンサーの囲い込みに走る姿が今の時代を表わしていると感じた。

初めて設置された専用ブースから一斉に撮影するインフルエンサーたち(8月19日 米・シカゴの民主党大会)