再審決めた元裁判官の思い

袴田さんは無罪だと思っていた3人目の元裁判官、村山浩昭さん(68)。静岡地裁で袴田事件の再審請求を担当していた。
「5点の衣類」のカラー写真を見た時の印象をこう話す。

村山浩昭元裁判官
「血の赤みがかなり強いというのと、下着のシャツが白いですよね。率直に言って、1年以上味噌に漬かってこういう色なのかというのは、素人でも疑問に思うのではないかと思います」
そして2014年、村山さんを裁判長とする静岡地裁は、再審開始と袴田さんの釈放を決めた。
「5点の衣類」は捜査機関によって、ねつ造された疑いがあるとした。袴田さんは48年ぶりに拘留を解かれた。

袴田さん(当時78歳)
「皆さんがどれだけのご意見を持つのか。改革は完全に正しく行うつもりでございます。どうかよろしくお願いします」
死刑囚としての長年の拘留は、袴田さんの精神をむしばんでいた。
開いたかのように見えた再審の扉。しかし、決定に対して、検察は不服を申し立て、東京高裁は再審開始を取り消した。
結局、2023年の裁判のやり直しが確定するまでに、さらに9年の月日を費やした。
元裁判官の村山さんは、静岡地裁前で袴田さんの判決を待っていた。

村山浩昭 元裁判官
「無罪らしくて、良かったです。本当に長かったです」
「(裁判は)人間がやることですから、間違いはないということはないんですよね。実際に私がやった裁判が、全部正しいかと言われると、その保証はありません。ましてや新しい証拠が提出されたら、判断が違うということは十分にあり得ます。自分が関わった判断が間違っていたとしても、それが事後的に救済されるシステムがあるかどうかで裁判官は救われる」
村山さんは再審に関する法律の見直しを訴えた。