永瀬さんが深く尊敬した「進みゆく人」
ー杉山千代さんは、永瀬さんにとってどのような存在だったのでしょうか。
「一言でいえば『進みゆく人』です。これは、永瀬さんが杉山千代さんについて評した言葉です。杉山千代さんは、師範学校卒業後、東京で苦労しながら勉強して、高等女学校の教員になりました。戦後にジャーナリストだった夫が公職追放となったときには、染色教室を開いて家計を支えました。亡くなられたときには、『討死』とさえ言われたほど、いつもよりよい道を目指して前に前に進んでいらした方です」
「杉山千代さんは、『心を改めることに専念すれば日も足らないのではあるまいか』と随筆に書き、永瀬さんは、その言葉を受けて『改まらぬ心や性質を死ぬまで日も足らず改めようとする、その人こそいつまでも若い人なのではなかろうか』と書いています」
「杉山千代さんが、少しでも自分の至らないところを改めて、よりよく生きようとしていたことを、永瀬さんは深く尊敬していました。永瀬さんが、常により良い未来を目指し、人のためにも自分のためにも尽くす生き方を選び取りながら、年を重ねていったことには、杉山千代さんの生き方と響き合っていたように思えてなりません」
