熊川哲也が感じる情報社会の危うさ「だからこそバレエを」
2023年には「熊川財団」を発足し、高い志と才能を持つ子どもに奨学金を出しサポートを続ける熊川さんですが、バレエ教育への強い思いがあるといいます。
熊川哲也さん:
「すごく便利な文明の力が発達して、怖い世界に突入している危機感もありつつ、そこに対峙するためには、人の感情がAIに勝っていかなきゃいけない。それがクラシックバレエ教える上でキーになりそうな気がしてて」
情報社会の今だからこそバレエを学んで欲しいー。

熊川哲也さん:
「やっぱりね、“バレエにはセリフがない”というのは、ものすごい大きなキーだと思う。隣の人は高く跳んだけど、俺はここまでしか跳んでいない。こっちは汚く跳んでいるけど、僕はキレイに跳んでるじゃんとか、個人が優先されていくことになるから、個性の教育になる」

セリフがないバレエ。喜怒哀楽を踊りと表情だけで表現するからこそ、人間らしい感情が育まれると熊川さんは信じています。
子どもを魅了する仕掛けも…新作「マーメイド」
バレエを目指す子どもを増やそうと、熊川さんが今取り組んでいるのが、アンデルセンの童話「人魚姫」を題材にした「マーメイド」です。

熊川哲也さん:
「子どもたちに見てもらって、『あの舞台に立ちたい』とか『バレリーナになりたい』という子どもたちを、業界底上げを含めて増やしたい。例えば今、大谷君がいて、子どもは『野球をやりたい』って思うわけじゃないですか」
舞台の美術セットも、子どもたちが楽しめるようこだわりました。

ステージ後方には、水平に何本もワイヤーをはり「きらきら光る海の水面」を表現。ワイヤーの間隔が上に行くほど狭くなっているので、遠くまで続く海原のように見えます。

舞台の幕にも、まるで水中にいるかのような魚の大群が描かれています。